「やらせ」報道

 あいりん地区で連日続いた、労働者たちの西成警察署への抗議行動のニュースには、「暴動」という見出しがつけられ、選ばれた粗暴な行動の映像が繰り返し放映されていましたが、18日に、労働者を支援していた釜ケ崎地域合同労働組合の委員長が同署に逮捕されました。車を止めて抗議していたことが、交通妨害だとして、道路交通法違反に問われたのす。
 たまたま見たニュース番組で、二人の労働者がインタビューに答えていましたが、(もっとも、顔を映さない映像だったので、ほんとに路上にいた労働者だったのかどうかも分かりませんが)、その二人は、「抗議の仕方がよくないから、逮捕は当然でしょう」とか「彼は外の者を引き込んで抗議させてるんですよ」など、委員長や抗議行動に対して批判的な趣旨を発言・・・と思ったら、画面が切り替わって、スタジオのキャスターが、その声を引き取る形で、批判的なコメントをしていました。
 キャスターや局が、問題の抗議行動について、批判的な意見をもつかどうかは、全く別の問題です。またもちろん、その場にいたたくさんの人々の中には、抗議の仕方に批判的な人も含め、いろんな意見の人がいたでしょう。だが、連日大勢の労働者が集まったのは、どう転んでも、「委員長に抗議」するためだったのではなく、「警察署に抗議」するためだったのでしょう。ところが、大勢の労働者の中から、わざわざ「逮捕は当然だ」という人を(ほんとにそこにいた人かどうかさえ怪しいですが)選び出し、その声だけを、あたかも集まっていた労働者の意見のように「報道」する・・・・・・こういうのもまた、立派な「やらせ」報道ではないでしょうか。
 チベットでの「暴動」を伝える中国の官営ニュースで暴動を批判する「住民の声」ばかりが放映されると、「やらせ報道ですね」といった趣旨のコメントをつけ、自らは、西成での「暴動」を批判する「労働者の声」ばかりを放映して、テンとして恥じないのです。 
 といっても、昨今のマスコミは、すべてこうやって成り立っているわけですから、いまさらですがね。