2011年

 遅れましたが、新年おめでとうございます。
 おめでたいといえば、先日野田聖子氏が出産されたとのことです。ニュースがどんどん消化され排泄されてゆく昨今では、もはや旧聞になりましたが。
 報道によれば、「アメリカで提供された第三者の女性の卵子と、7歳年下で事実婚の関係にある男性の精子体外受精することによる妊娠」で出産した、とのこと。
 この問題をきちんとフォローしているわけではありませんが、日本生殖医学会でも日本産科婦人科学会でも、生殖医療は婚姻関係にある夫婦に限定し、第三者配偶子を使用する生殖医療は施行しない、という自主規制をしている筈です。もちろん、第三者配偶子による生殖医療への一定数の強い要望があり、社会的な許容度も進んで来ていることを背景に、両学会も関係省庁も、それを認める方向へ向けた法的その他の諸条件整備の検討もしているようですし、もしかすると、一歩踏み出そうとしているのかもしれません。しかし、関係機関等がなお慎重であるのは、この医療の及ぼす影響は、子を持ちたいという親の要望に応えるという単純な問題にとどまらないからです。例えば、同様の要望をもつ人々やその家族、配偶子の提供者(あるいは代理妊娠者)、そして何より生まれて来る子の、現在だけでなく将来にわたる権利と福祉の担保等について、そしてまた波及する社会的な影響について等、医学的法的社会福祉的な、多岐にわたる十分な検討が必要だと考えているからでしょう。例えば、生殖医学会が慎重な態度をとっている理由の中には、配偶子売買に道を拓くことに対する危惧はもちろん、「子を持たないという選択肢も含めた範囲で熟慮された女性の自己決定が十分に尊重されるかどうか不安が残る」ということなども含まれています。 
 でも、とにかく欲しい。欲しいものを手に入れて何が悪いのか。
 以前、タレント向井氏は、自らの卵子で、アメリカの女性に妊娠出産してもらい評判になりました。そして今回、議員野田氏は、アメリカの女性Y氏の卵子で妊娠し出産したわけです。ところで、生まれた子は、前には出産した女性X氏ではなく卵子提供者向井氏のものとなり、今回は逆に、卵子提供者である女性Y氏ではなく妊娠した野田氏のものとなりました。向井氏や野田氏がわが子を得たのは、この種の医療に金銭が関与できるアメリカにおいて、X氏やY氏が金を受け取った方で、向井氏や野田氏が金を出した方だからです。
 でも、とにかく欲しい。欲しいものを手に入れて何が悪いのか。
 同じ金銭がからんでいても、家が欲しい車が欲しい、というような場合と異なり、子供が欲しいという欲求には、有無をいわせない切実な趣があります。両者はどこが違うのでしょうか。いずれにしても、野田氏は、子供を持たないという生き方を選ばす、孤児を引き取って育てることを選ばず、自国では認められなくても外国の女性から卵子を買うという選択をしました。他人に有無のいえない個人の選択ではあります。しかし政治家野田氏としては、ともかく欲しいという自らの欲求を、そのような形で「社会化」するという政治行動をしたわけです。