死なずに殺させたい2

 「そんな」戦争も「あんな」戦争もありません、と書いたのですが、しかし、全く逆に、最近の「戦争」はかつての「あんな」戦争と全く違っています、と書くこともできます。
 支配権力の暴力部門である「軍」の第一の仕事は、普通思われているな「外敵」の防衛よりも先ず、国内支配権力の維持、つまり反乱を抑圧し治安を維持することです。
 戊辰「戦争」では、官軍といっても薩長軍の僭称に過ぎませんが、10年後の西南「戦争」では、鎮台兵は晴れて正規の国軍として、公務で賊軍を殺します。 
 やがて国内支配が強固になって反乱などがほとんどなくなると、国内仕事にあぶれた国軍は国外に派兵され、日清「戦争」以後、張り切って殺し合いの仕事に従事しているうちに、やがて世界「戦争」へと突入してゆきます。
 けれども、軍隊だけが遠い「戦場」で殺し合うといった時代はすぐに過ぎ去り、「総力戦」の時代になると、「普通の人」の頭上にも爆弾が降りかかり、負けた国はもちろん勝った国も、もうコリゴリということで終わります。
 ただし、国内が戦場になったことがなく、空から爆弾が降ってきたこともないアメリカだけは学習不足で、その後も、次々と戦争ばかりして今に至っているのはご承知の通りです。
 ただ、それらの戦争は、もはや古典的な「国」単位の戦争ではありません。一国政府が何より先ず国軍に「国」内の治安維持の仕事をさせるように、アメリカ政府は、「世界」といわないまでもかなり広域のパックスアメリカーナ支配権を確立しているつもりで、アメリカ軍に、勝手に決めた広域圏に、治安維持のつもりの戦争出動をさせています。ちなみに、グローバルというのはアメリカ圏という意味です。
 さてアベは、だけでなく強国アメリカにしがみついていることを国是と考える人々は、日本とアメリカが最強の絆で結ばれ、<我が軍>と米軍が共同で<どこか>を相手に「集団的自衛」をするつもりなのでしょうが、アメリカの思うような一極的なパックスアメリカーナ支配権そのものが、もはや破綻への道を転がり落ちつつある現在、再びニクソンショックが来ない保証はありません。
 「軍」の話ではありませんが、イギリスを筆頭に欧州各国が雪崩を打って参加した「アジアインフラ投資銀行」に、日米だけが当初不参加ということが3月末に確定しました。家具販売店の父娘確執とかエリカ議員の旅行疑惑といった報道ばかりで、このニュースは余り報道されませんが、これ、かなり大きなことではないのでしょうか。世界銀行アジア開発銀行による日米主導の経済体制は明らかに崩れつつあります。
 下世話にいうように、「いつまでもあると思うな何とやら」。どうなっても結構ですが、<我が軍>など物騒なことだけは願い下げ。どことも平和で穏便で友好的に願いたいものですが、心細くなって来たからこそ、やたら強面になっているのでしょう。いや、アベだけではありません。私やみなさん、「普通の人」のことをいっているのです。