寛容の非寛容

 イギリスの投票日である。
 コービンが窮地に立っている、とブレイディみかこ氏が伝えている。
 彼は、EO残留が労働者を守ることになると主張するのだが、「そんなことをいうが、ギリシャをはじめ、EU内ではすごい失業率じゃないか」、と反論される。「生活が大変なのは移民のせいではなく、保守党政権の予算削減のせいです」と説得しようとしても、「俺たちは移民に仕事を取られてるんだ、移民に回す予算をこっちに回せ」といわれる。「俺は生涯労働党を支持してきたが、今回は離脱に入れる」。
 労働党の固い支持基盤である根っからのワーキングクラスと、コービンを熱烈に支持した知的な若者たちの団結が、労働党エスタブリッシュメントを打ち破ってジェレミー・コービンを党首に当選させたのだが、彼らの奇跡の団結が、EU離脱問題で壊れようとしている。彼らには、コービンも「エリート」に見えるのだろう。「俺たりはもうデモクラシーに飽き飽きしているのだ」。
 一方、エマニュエル・トッドは、『シャルリとはだれか?』という本に、「人種差別と没落する西欧」という副題を付けた。「数百万のフランス人が大急ぎで街に出て、自分たちの社会に優先的に必要なこととして、弱者たちの宗教に唾を吐きかける権利を明確化しようとした」のはなぜか。経済的あるいは知的エリートが構想しリードするEUの新共和主義は、「自由・平等・博愛」のスローガンから、平等を欠落させることで排除の自由権を重視する共同政体になっている。
 そういえば、「トランプ旋風」も吹き荒れている。まあ、あちらでは、エスタブリッシュ・クリントン氏が勝つのだろうが。