アジアあるいは義侠について38:追記

 書いたものは読み返さないため、忘れていましたが、そういえば、もともとは西郷とか竹内とかではなく、中島氏の本ですらなくて、「アジアあるいは義侠心について」ほんのすこしだけ考えるつもりのタイトルでした。もちろんそんな予定などどうでもいいのですが、記憶では『ヒストリア』という小説の書名を、というか書名だけですが、一度ならず出したような気がします。
 書名しか出していなくても、池上永一氏のこの魅力的な長編小説を読まれた方なら、この小説の名が最初の頃から顔を出していた理由をご想像いただけると思います。だから、余計なことをまた書かない方がよいのでしょうが、思い出しましたので、余計な補足というか蛇足を、ほんの少しだけ
 ・・・と思ったのですが、その前に、やはり一昨日のことを少し。
 
 12日の会談については、様々なことがいわれています。それぞれたぶん、当たっているのでしょう。いずれにしてもしかし、これで大規模な戦争の方に針が進んだ、という論評はないようです。内心ではその方向を望んでいた政治家や御用聞きがいるようですが。
 戦争が何故起こるかといえば、儲かる人々が儲かるからでしょう。世界大戦が終り冷戦の大枠も終り、国際的緊張が緩むことで莫大な軍事予算が縮小に転じることを恐れたアメリ軍産複合体は、国際社会の平和安定化を妨げるために新たな脅威論を作り出し、国外で次々と適度な戦争をすることで、儲けを維持しようとしてきました。
 しかし、儲けるといっても、現在の戦争では、昔のように、戦利品や賠償金や奴隷や領土領民の獲得など期待できません。現在の戦争は単に大規模消費であって、軍隊が生産するのは、死者とその遺族と瓦礫とそして悲しみだけです。ではなぜ軍産が儲かるのかといえば、国庫です。戦争をすれば、また戦争に備えて、国は、殺人と破壊を主な仕事とする軍隊という大組織を維持し拡大し、殺人と破壊のための超高価な道具を軍需産業から大量に買い入れます。もちろん、そのための人件費や購買代金は、国民から集めた国庫の金から支払われますから、何のことはない、軍産が儲けるとは、一般国民の金を、国庫を通して軍産に移すことに他なりません。
 しかしもちろん国民も、ただ金を取られてきたわけではなくて、彼らはその金で、イメージ商品を買ってきたのでした。脅威からの安全とか自由と民主主義とか、その他アメリカン何とかの諸々です。中には「平和の戦争」などという怪しい商品まであります(「パックスアメリカーナ」というのが商品名)。もちろんそれらは観念(イメージ)商品ですから、そのリアルはほとんど問われません。ある国に侵攻して殺しまくり破壊しまくることがその国の人々に安息を与えることだなどというのは、冷静に考えれば全くインチキ商品なのですが、それでも強力に宣伝されると、一部のクレームはあっても、大多数の人々はそれを買って代金を支払い、軍産を儲けさせたのでした。
 長い間アメリカは、そのようなシステムを既存体制(エスタブリッシュメント)として構築し維持してきました。「イメージなんか食えない」とならかったのは、とにかく国民が豊かだったからでしょう。金のある貴族や市民たちが、闘技場での殺し合いに金を払ったように。ところが、盛者必衰、奢れるローマは久しからず。もはやダントツではなくなってきて、落ち目の人々に不満が溜まってゆきます。
 トランプというのは、ご承知のように、何というか何ともいえない人物ですが、けしからん言動と併せて、エスタブリッシュメントに喧嘩を売ってみせるというパフォーマンスを見せて当選しました。彼は、海外基地に金がかかるといってきましたが、今回さらに、米韓合同演習も「金がかかる」、などとといい出しました。「安全保障は金の問題じゃない」という当然の批判の声があがっているようですが、多分それは建前で、本音は、「バカか、金がかかるから儲かるんじゃないか」、ということでしょう。
 以上もそうですが、ここからは特にいい加減な話です。今日トランプは、「北はいい不動産をもっている」と発言したようです。トランプは確か不動産成金でしたね。不動産屋から見れば、上品に見えて実は「自由のための戦争」とかで儲けてきた既存システムに入り込むよりも、北の土地で直接儲けた方が手っ取り早い、ということでしょうか。まあ、戦争産業が儲けるよりは、動産屋が儲ける方が、それはマシ、と思っておきましょう。
 (ア、またタイトルは先送りです)