2 反対デモに参加すると語る宇宙人に出会った話

 (承前横道)日当をもらって五輪反対デモに参加したとかするとか言ったらしい男の話は、NHKが謝る事態になったようだ。発言の裏をとるどころか発言を勝手に歪めて文字放映してしまう「ドキュメンタリ」には呆れる他ないが、最近のNHKは、あるいはテレビは、こんなものになってしまったのかもしれない。太田愛氏の脚本を使っても、「天井の葦」を読むことはしないのだろう。

 映画でもテレビ番組でも、「ドキュメンタリ」は、一応事実シーンによって構成されることになっている。しかしもちろん、そこに記録された「事実」は、ある制作意図によって関心を持たれ切り取られ撮影され組み込まれた「事実」であって、だから、だたのドライブレコーダー的な「記録」ではなく、例えばレニ・リーフェンシュタールの、市川崑の、あるいは河瀬直美監督の「作品」となる。

 しかし曲がりなりにも「事実」を撮影することから進んで、事実について「話す人」を撮影するということになると、事態はもう1次元ややこしくなる。

 「私は宇宙人をこの目で見ました」という人がいるというのが事実と、宇宙人が来ているという事実と。
 仮に「見た」という証言が事実であるとして、そういう場合には、実際に宇宙人が来ている確率と、人が嘘をいう確率や見間違える確率や記憶が変形する確率などを、比較計算してみるのが一つの手である。もっとも、人は計算そのものを自ら歪めてしまうのが常なので、証言を信じて宇宙人が来ていると言い張る人もかなりいるわけであるが。

 今回の件では、NHKは、裏を取るどころか、公園の男からきちんと証言をとることすらしていなかったようだが、仮に、男がカメラの前で、「金をもらってデモに行く」と話したとしよう。男の証言がまるきりの嘘である確率も一定値あるが、仮に嘘でなかった場合には、一つには、本当に誰かが、1人や2人では全く意味がないからご苦労様にもどこかから百人ほども人を集め、仮に一人3千円なら合計30万円もの大金を出して、わざわざデモ人数を増やして何か得をするという確率。そしてもう一つには。人をわずか一人だけ見つけて、「この日当でデモに行ってくれませんか」と1万円を渡しておいて、テレビクルーに「あそこにいる人が金をもらってデモに行くそうですよ」というのはどうか。人集めもはるかにたやすく、出費も30分の一ですみ、作為秘密がもれる可能性もはるかに低い。となると、五輪で巨額な金を手に入れ、その上メディア操作の専門家集団がいる五輪推進一族の周辺のどこかで、そういった動きがある確率は。・・・もちろん、そういう計算などしてみるつもりもなくデモはけしからんと思って拡散する人もいて、数学のように計算の答えはでないのであるが。

 ちなみに、宇宙人の件については、それもNHKの「LIVE!]という番組に、「宇宙人に出会ったというカリフォルニア州の農夫」が出ていて、これははっきりとカメラの前で詳しく語っているのが、youtubeにアップされている。 https://www.youtube.com/watch?v=RXDiANEdeVI