平和教育は間違っていた

 先日、新聞の投書欄に、子どもの声が載っていた。

 これまで、学校でも家でも、大人たちから、「戦争は絶対ダメ、とにかく平和が一番」、と教えられてきた。でも、そんな平和主義教育は間違いだった。ウクライナの人々は戦っている。世界がウクライナの「戦争」を応援している。私も、うんぬん。

 まあ、純真な子どもにとっては、当然そういうことになる。「ゼレンスキーも悪いんじゃないのか」などというには、森元首相レベルまで世間からズレてしまった老人にならなければならない。
 2度目の世界大戦が終わった後もいくつも戦争があったが、今回ほど、「戦争する国」を支持する声、その国の「戦争」を称賛し応援する声があふれたことはない。余りにも称賛し過ぎて、昨今では少しばかり声枯れ現象が起きている程である。
 侵攻してくる「悪」に立ち向かう「自衛」の戦いは絶対正しいとなれば、絶対平和主義は間違いだと、子どもでも分かる。北ミサイルから「防衛」するために増税してミサイルを持ち、悪の基地を叩くことは正しい、と。
 そういう物騒な政府与党の目論見に、例えば日本共産党は立ち向かう。軍事強国化に反対し、とりわけ9条を含む改憲に断固反対するのは、共産党だけである。その共産党も、昔、新憲法案を審議する国会では9条に反対し、防衛のための軍備と交戦権は国家自立の根幹だと主張した。(ちなみに、それに対して新憲法提案者の吉田首相は「あらゆる戦争は自衛の為だと称して始まるのでありまして」と、9条を擁護し、でもすぐに再軍備に舵を切ったのだった)。また今の共産党も、日米安保破棄と違憲自衛隊解体という基本態度を堅持し9条改憲に断固反対しつつも、連合政権の一翼を担う場合には、さしあたり自衛隊の解体はいわずに、防衛に活用もするそうである。断然平和主義憲法を守ろうという人々にとっても、自衛のため防衛のための戦争は正しいのであろう。
 地球防衛軍は正義の軍である。学校でも家でも、大人たちから、「戦争は絶対ダメ、とにかく平和が一番」、と教えられてきた子どもは、ウクライナ戦争のニュースを見て、平和主義教育は間違いだったと納得し、次の番組で、宇宙人や怪獣や鬼から地球や国や家族を「防衛する」正義の戦争を応援する。