だれと共に暮らしているか

 媒図かずお氏が、かなり変わった外観の邸宅を建てようとして、周囲の住人ともめているらしい。この件については、個人表現と地域景観、つまり[個人vs地域]という形で問題にされており、現れとしては確かにそうであるから、特にいうことはない。
 しかし媒図氏は、おそらく、自分[個人]のために、今度の邸宅を建てようとしているのではない。記念館、博物館といった、はっきりしたプランでなくとも、友人やファンが訪れ、「<みんな>が面白がってくれる、楽しんでくれる」家を作ろうと思って、トレードマークでもある赤白の外壁にしたのではなかろうか。
 「個人の勝手」として現れているのは、むしろ、人々にとって<みんな>とは誰なのか、いま人は誰と「共に暮らしている」のか、という問題である。普通は、特別注文の邸宅を建てるような資力はないから、ほとんどの人は隣人と「共に暮らして」などいないということが、問題化しないのであるが。