AIというひと

 横着な友人が、何かの会で挨拶をしなければならなくなったらしい。でも、面倒だ。
 そこで、AIさん(ChatGPT)に相談したという。

 「これこれの団体のこれこれの会で挨拶をしなければならないのですが、何を話せばいいでしょうか?」

 すると、すぐに、実に見事なスピーチ原稿が送られて来た。
 感心して、

 「ありがとうございます。すばらしい挨拶文ですね」

と送ると、AIさんから、

 「お手伝いができてうれしいです。またいつでもご相談ください。ご成功をお祈りしています」

と返ってきたという。

 AIに、「うれしいです」という感情はない。「お祈りしています」という信仰も気持ちもない。ただこのような場面では多くそのような文言が使われる、というデータ蓄積があるだけである。
 などと野暮をいってはいけない。AIさんに「うれしいです」といわれて、横着な友人は「うれしい」と思い、AIさんに「お祈りしています」といわれて、横着にも励まされた気持ちになったのである。
 もっとも、実際のスピーチでは、流石にAIさんの原稿を使ったりはしなかったようだが。しかし、横着にパソコンの前にいるだけで、「AIさんというひと」との会話ができたのであった。
 AIさんは、他の人と違って「素直な、裏のない、信頼できる、ひと」だと、横着な友人はいっている。
 そういう時代、ということである。