1-1:1897-1945

 昔を散歩しようと思う。
 とりあえず、明治30年は1897年である。
 奇しくも、共にその年の1月に生まれ、そして共に1945年日本敗戦の直後に不慮の死を遂げた、2人の人物がいる。三木清チャンドラ・ボースである。
 三木清は、兵庫県の龍野市(といっても今はひらがなで書くらしく、また当時は揖保郡揖西村だったが)で1897年1月5日に生まれた。そして、敗戦の年1945年9月26日、治安維持法容疑者高倉テルをかくまったことで検挙され、豊多摩拘置所で、疥癬の悪化により獄死した。
 スバス・チャンドラ・ボースは、三木と同年同月の23日、インド(といっても当時はイギリス領であったが)のベンガル湾に面したオリッサ州で生まれた。そして1945年8月、日本降伏を知るやシンガポールからソ連へ向かおうとしたが、搭乗機が給油に立ち寄った台北松山飛行場で離陸に失敗、18日に死亡した。
 三木清といい、チャンドラ・ボースといっても、どういう人物だったかを知る人は、もはや少なくなっているだろう。が、いまは触れない。
 とりあえず、2人が生まれた年あたりに戻って、少し散歩をはじめようと思う。当然、寄り道ばかりするつもりである。