「聖火」は国威を運ぶ

 騒がしいことである。
 知られているように、聖火リレーなるものは、はじめから終わりまでナチスの「国威発揚」大会だった、1936年ベルリン大会からはじまった。開会式に詰めかけた10万人の観衆が、右手を掲げて「ハイル・ヒトラー!」と叫び、得意満面のヒトラーが開会を宣言。古代オリンピックの発祥地ギリシャで採火し、綿密に仕組まれた東欧ルートでベルリンまで運ばれ、メインスタジアムに掲げられた火は、「文化的正統性をもってヨーロッパに君臨するナチスドイツ」を強く印象付けた。さらに、ルート各国の道路事情の調査は、後のドイツ軍進撃の格好の予備調査となった。
 単なるオリンピック「トーチ」「ファイア」を、わざわざ「聖火」と訳し、どうせ開催国の「国威発揚」の宣伝行事でしかないものを、「国際友好」の行事と報道する。その一方で、ずっと以前から中国政府が進めてきた、厳しい弾圧を伴う強圧的な少数民族併合政策を、いま頃気がついたように報道する。
 どうでもよいが、いつもながらの風景である。