飲酒取締法間近!

 今日の夕刊に、「飲酒強要は傷害」という見出しの記事が載っています。イッキ飲み強要に、傷害致死罪の有罪判決が出たそうです。しかし、間もなく、こういう事件はなくなるかもしれなせん。ご承知のように、長年の懸案となっていた「飲酒取締法案」が、今国会で可決成立する見込みだからです。
 実に長い歴史でした。
 酒は百薬の長人生の友ではありますが、けれどもまた、人は酒で破り酒で殺し酒で犯し酒で汚し、酒で自らの人生を棒に振りまわりの人々の人生を壊して来ました。ようやく煙草の封じ込めに成功しつつある今、心ある為政者の目が次に酒害の撲滅に向かうことは、当然の流れといえましょう。
 けれども、飲酒禁止の実現は苦難の道でした。その道の先駆的な試みであった1920年アメリカの禁酒法が、ギャング横行と結びつけられて語られるせいで、何が禁止されても飲酒が禁止されるなどいうことは2度と再びあるわけがない、というイメージが拡がってしまっているからです。
 そこで、「反酒族」議員たちは霞ヶ関官僚たちの智慧を借りメディアを動かして、飲酒撲滅キャンペーンによって、世論誘導にとりかかったのでした。日本には記者クラブという便利なシステムがありますので、マスコミを一斉に操るのは簡単なのです。ところが、ご承知のように最初は飲酒運転事故の悲惨を広く報道したのですが、そのキャンペーンは中途半端に終わりました。世論は、「飲むな」という方向に向かわず「飲んだら乗るな」という線から出ようとはしなかったからです。そこで次に、飲酒そのものの害毒を直接訴えようと、有名人を使った種々のキャンペーンを試みたのですが、これも、キャンペーンに使われた山本モナらの個人的責任とされて失敗。
 だが、さすがプロ。政・官だけでは限界があると、世論誘導を広告代理店に委託すると、彼らはたちまち動き出したのです。その第一弾が何と、酒のサの字も関係なく、「大麻撲滅!」キャンペーン。かつてはミュージシャンやタレントだけだった有名人の逮捕者も野球相撲ラグビーなどのスポーツ選手などにもどんどん拡がり、かつては場末の売人だけだった一般人の逮捕者も慶応京大などの学生などどんどん拡がりました。
 だが、何故でしょうか。その答えは、例えば今日の夕刊(朝日)を見れば分かります。

 社会面に4段ヌキの見出しで「夜の街大麻フツー」、それから、「レゲエに合わせ「葉っぱ」「葉っぱ」、そしてまた、「21歳「崇拝」28歳「個人の自由」」
 もちろんこれは、反大麻キャンペーン記事にみえます。ではありますが。
 1)この記事には、大麻吸引者が人を傷つけたり殺したり、自分の身体を壊したり心を毀したりしてしまったというような事件報道はありません。
 2)大麻吸飲者の声が出ていますが、それは、大麻を吸えば「リラックスできる」「生き生きとしていられる」「すべてがうまくいくみたいな感覚」といったようなものばかり。 見出しからして「レゲエに合わせて「葉っぱ」「葉っぱ」」なんて、楽しそうではないですか。
 3)「個人の自由」だ、「大麻を崇拝している」といった肯定的な意見が紹介されています。
 4)そして、記事の一番最後に、こうあります。逮捕された学生は「飲酒と同じと考えていたり」する。
 ここまで来て、この記事の隠された狙いが、実は「大麻と酒の比較」キャンペーンにあったことが分かります。おそらく、洗脳広告の最先端ノウハウが使われているのでしょう。サブリミナル効果のように、繰り返される大麻報道を見聞きする度に、読者や視聴者の脳には、大麻・と・酒」という対比が、刷り込まれてゆきます。
 大麻と酒。酒は、実に悲惨な事件を起こします。飲酒運転事故喧嘩傷害痴漢殺人などなどなど。また、事件にならずとも泥酔者の醜態は眼に余ります。一方上の記事もそうですが、大麻についてはそういう事件は、起こらないのか隠されているのか、ともかく報道されません。ところが、大麻はほんの少量の草や道具を持っているだけで逮捕され、その記事が毎日のように報道されますが、一方豪華なワイナリーや高価な杯の所持は自慢のタネです。・・・こうして、マスコミの大麻報道によって、「粗暴事件などの報道はない大麻、そんな大麻でも所持は違法」、ところが一方、「昔から粗暴事件の元凶である酒、それなのに酒は自由勝手に飲める」、という「不公平感」が、刷り込まれてゆくのです。
 それでも、アメリカの銃と同じで、長年放置されてきた酒を禁止しようとまでは、人々はなかなか思いません。
 でも、司法も今回は本気のようです。冒頭に書きましたが、今日の夕刊にあるように、イッキ飲みに傷害致死罪の有罪判決が出たそうです。でも、大麻のように、飲酒そのものを禁止しなければ、酒による飲酒運転事故喧嘩傷害痴漢殺人などなどはなくなりません。そこで、最後の手段と、「反飲酒議員連盟」のリーダーが、身を挺して大きな賭けに出たのではないでしょうか。酒を飲むと、盛り場でのトラブルになったり家庭でのトラブル会社でのトラブルになったりするだけではありません。酒を飲むと、実に、「国際的な信用を失うのです!」、これこの通り・・・・・・
 あれほど明らかに酒の害を身を以て世界に示してくれた大臣のご努力によって、今度こそ、カポネの時代から90年ぶりの禁酒法すなわち「飲酒取締法案」に対して、反対する議員はほとんどいないと思われます。