怖い爆弾テロ

 久しぶりにバスに乗った。あちこち広告や注意書きがあるのを眺めていると、「テロ防止警戒中」という大きな文字が目に付いた。「防止警戒中」というのもおかしないい方だが、ともかくその下に1行、こう書いてある。
 「不審物を見つけたときは、運転手にご連絡ください。」
 バスに乗ったとき、座席に忘れ物をしたり、通路に落とし物をしたりすることはよくある。先日、後部座席で寝ている客を乗せたままバスが車庫入りし、女性客が一晩を過ごしたというニュースもあった。だから、忘れ物、落とし物、眠り客のような「不審物を見つけたときは、運転手にご連絡ください」、という注意書きは、誠に適切なものだろう。
 けれども、その注意書きが、何故「テロ防止警戒」というタイトルなのか。
 なるほど、爆弾も「不審物」ではある。けれども、忘れ物や落とし物は、多分年間ゴマンとあろう。眠っていて降り忘れる客も、車庫で一晩というのは稀としても、それほど珍しいことではないだろう。対して、発見された不審物が爆弾だったという事件は、これまで実際に1回でもあったのだろうか。余りにも確率を無視したタイトルである。まさか、テロという大事件がこのバスで起きてほしいと、密かに期待しているのではないであろうが。
 そう思いながら目を移すと、もう一枚、「次のことは法令により禁止されています」という注意書きがあった。読んでみると、「運転手にみだりに話しかけること」から始まり、「物を車外に捨てること」、「運転装置に手を触れること」など、いくつかの禁止項目が列記されている。だが、「車内に爆弾を仕掛けること」という項目はどこにもなかった。