F・ノート17

 中断してしまった。今回は、番外編で。
 公園テント村住人は、普通、「ホームレス」と呼ばれる。支援者や住人自身も、使うことがあるかもしれない。何しろ「ホームレス」は、辞書にも載っている一般名詞なのだから。
 大辞泉:住む家をもたない人。公園や駅・地下道などに住みついている人。浮浪者。
 大辞林:失業などによって住む家を失い、路上や駅の構内などに寝泊まりせざるをえない人。
 後者の方が同情的な眼をもっているようだが、いずれにしても、当然ながら、原語のホームレスつまり「ホームがない」を「住む家がない」と移し替えて、本義としている。
 しかし、「住む家」「ホーム」とは何か。あるいは、「住む家がない」「ホームがない」とは、どういうコトをいうのだろうか。
 を英和辞典でひくと、「わが家、 自宅、生家」といった訳があるが、ある辞書では、「(家族と共に住んでいる)家」となっており、また別の辞書では、わざわざ、「houseが家屋を意味するのに対し、home は建物のほかにその快適さ, 心情的温かさとそこに住む家族を含む」と注記されている(新グローバル英和辞典)。ちなみに、「F・ノート」の「F」は「ファミリア」ということだった。
 とはいえ、「快適さ、心情的暖かさ」や「家族」が欠けているからといって、離婚寸前の家庭も、アパートに住む単身者も、身寄りのない入院患者も、もちろんホームレスとはいわれない。また、テントに住んでいるからといって、遊牧民はホームレスだ、などとは誰もいわない。なおまた、「不法」な場所に建てられた家屋に住んでいるからといって、ただちにホームレスだとはいわれない。
 ところが、公園のテント村住人は、「ホームレス」だといわれる。テントは「ホーム」ではない、そこで暮らす人は所詮「野宿者」、野原に寝転がっているのと同類だ、と見なされるのだ。いや野宿というのも、単に寝っ転がっているのとは違うのであるが。