亀田問題

 いうまでもないが亀田一家もまた商品であって東京のテレビ局TBSが下品で攻撃的な西成大阪人というイメージで一家を盛り上げジム協会その他ともども大儲けしたのである。
 おそらく金を賭けた「殴り合い」から更に入場料を取って見せ物興行にするというようにして始まったボクシングには競技の性格上粗野で凶暴な野蛮人キャラを商品として売り出すという戦略が常にある。しかし人情劇「明日のジョー」が受ける日本ではタイソンのような単純凶暴だけでは劇場価値は低いのでチチローさくらパパ浜口パパなどの系譜に乗って亀田一家物語という付加価値が付けられる。そして加担しようのない無名外国人選手を相手にさせて大阪ヤンキーが外国人をやっつけて勝ち誇るという熱狂劇にファン大衆を巻き込むことでテレビ局ジム協会ともども大儲けをしたのであった。
 しかし儲ける側のすごいのはむしろここからである。
 勝ち誇るヤンキーと一体化させ熱狂させるという戦略にまんまとひっかかったように見えるファン大衆ではあるが実はボクシングという競技というよりパフォーマンス劇を面白がっているに過ぎないことなどとっくに承知の儲ける側は作られたカラクリに鼻白む声の方が高まってきたと見るや一転ガラリと相手を変える。今度は苦労人で性格もよい日本人強力ボクサーを相手にさせて成り上がった品のない大阪のチンピラが年長ボクサーにやられるのを見て溜飲を下げるという第2幕をファン大衆に提供することで何億か何十億か知らないがともかくまたまた大儲けしたのである。
 味をしめた連中はこれでは終わらずおそらく第3幕には何らかの復活劇を用意してまたも大儲けを狙っているのにちがいない。