とっさの行動

 あの日、ニュースを見ました。
 惨劇のあった交差点を望む歩道に人垣ができていて、その人々が競って携帯カメラの手を差し上げている姿が映っていました。
 彼らが遠巻きに撮していたのは、点々と倒れた被害者に身を寄せて必死に救援活動をしている人々の輪です。
 それらの人々は、決して、プロの警官や救急隊ばかりだったのではありません。
 当日たまたま通り合わせて救援に加わった徳島県の医師が、医師でありながら救えなかった人々のことを沈痛に振り返りつつ、今日のテレビで語っていました。「医師である自分でも足がすくむ現場で、一般の人も救護に参加していたことに感動しました。日頃オタクとかアキバ族とかいわれている人々も、あのとき何人も救援活動に加わってくれました。あの人たちのおかげで助かった方もいるでしょう。もしもまた会えるなら、彼らに「ありがとう!」といいたいです」、と。
 一方、歩道から携帯カメラの手を差し上げていた人々は、撮った写真を添付して、幸運にも大事件に居合わせたことを、メールで自慢したのでしょうか。
 歩道から思わず駆け寄るのか、歩道からカメラを向けるのか。とっさの時にそれを分けるのは何なのでしょうか。そして、私は、どうしていたでしょうか。