サミットとコンビニ(3)

 「〜現代の商売というのは、客を「待って」売るのではなく、断然積極的に欲しいと「思わせる」。ポジティヴ商売というやつだ。そういうことで、企業はコマーシャルにものすごい金をかけておる。
 ところが、ありがたいことにだ。われわれの場合は、コマーシャルに大金をかける必要は全くない。金はいらない。報道番組、ニュースが公共コマーシャルなんだ。例えば、街頭で男が女を殴りつけたとすると・・・・・
 「すみません。ちょっと時間です。また後ほどお願いしますので、ともかく予定時間のことがありますので、本題に入らせて頂きます。
 「分かった分かった。じゃ、話は後でまたするとして、ともかくだ、違法行為があるまでじっと待って事件が起こってから逮捕するというような姿勢は、完全に時代遅れである。違法行為とは行動と法の関係概念であって、法を司るのはわれわれの側でありからして、われわれが違法行為を司る主体であるべきである。そのことを肝に命じて任務を遂行してもらいたい。
 「はいはい、それはもう、積極警備ポジティヴなんとかといわれるお考えは十分受け止めさせて頂いておりまして、その方針に沿った警備計画ですので。訓辞の方はそれ位にして頂きまして、早速本題に入らせて頂きます。
 では、今回の作戦計画について、担当課長から説明してください。
 「それでは説明させて頂きます。時間が迫っておりますので、ごく手短にいたします。
 問題の主催団体及び当日の予定行動概要等についての情報は、お手元の資料の1から2ページと、それから詳細は最後に参考資料でつけてございますので、時間の関係で省略させて頂きます。なお、この資料はマル秘3号扱いですので、よろしくお願いいたします。
 そこで、早速、明後日の作戦でありますが、ただいまご訓辞頂きましたように、積極警備を目した警備計画といたしまして、資料の3ページ以下にありますような作戦を計画立案いたしました。え〜この案をとる理由といたいましては、ここで詳細は申し上げられませんが、諸般の情報に基づき、特に先頭車両をターゲットと申しますと語弊がありますが、いわゆる重点警備対象とするものであります。もちろん、他の作戦と並んで、この警備作戦につきましても、模擬訓練を1ヶ月前から繰り返し、万全の準備をしてきておりますので、本日最終的なゴーサインを頂きますと、直ちにスタートできます。
 え〜、時間の関係で、かいつまんでの説明になりますが、えーっと4ページの右側にありますのが、今回の許可コースの略図でありまして、うちC12〜C15と記しておりますのが、本作戦の予定されております交差点であります。
 先ず配置でございますが、交通警邏隊および署の交通安全課、公安、刑事その他各部署と十分連携の上、3ページにございますように配置することとなっております。そこは配置図でごらんください。で、本隊につきましては、次のページにありますように、両側に壁を作ることはこれまでと同様でありますが、先頭車両付近に隊員を重点配置いたします。また、予め横断歩道の信号は手動にし、切り替え機に要員を配備します。その他周辺の配置につきましては、戻りますが3ページでご確認いただきまして、時間の関係で省略させて頂きます。
 さてそこで、今回の作戦ですが、えー5ページの拡大図で説明させて頂きます。矢印が進行方向ですが、交差点Cに先頭車両が進入した後、指揮班長が停止が必要だと判断した場合に、旗と笛により、瞬時に緊急制止行動の指示を出します。
 「必要と判断した場合というのは、交差点での交通事故の危険性といったことか。
 「え〜、停止が必要と判断した場合というのは、交通警備上、指揮官が、このまま進ませると危険だ、と判断した場合という意味です。で、その危険ということですが、交差点は交通止めにしますので、通常の交通事故が起こる危険性は低いと思われますが、ここでは、より総合的な観点でお考え頂きたいと思います。
 「総合的な危険ねェ・・・(続)