サミットとコンビニ(4)

 (乗りかかった船が甚だ面倒ながら途中下船もできず・・・というわけで)
 「総合的危険か。もうひとつ分かり難いな。端的にいうと、どういうことかね。
 「え〜、端的にといわれましても困るのですが、例えばですね、あくまで例えばということですが、進んで来ました示威行進がそのまま通過して最後まで大過なく終了し、主催者的に成功であるということになりますと、その勢いで、期間中により大規模な行動を企画実行することになるかもしれません。そうしますと、肝心の期間中の警備に非常に大きな負担が生じ、危険性が増します。というわけで、ひとつの交差点を進行することが、時には、通常の小さな交通事故以上の重大な危険性に関連してくる、といったこともあながち否定できません。もちろん、これはあくまで極端ないい方をしたものでして、そういう理由だけで停止させるというようなことはありませんが、そういったことも判断材料として排除できないだろうということでありまして、詳しくは申し上げられませんが、まあ諸般の関係事項を併せて、積極的な総合判断を行うということであります。
 「なるほど、積極的にね。成功させると危険であると・・・
 「いえいえ、それは極端にいえばということで申し上げたわけでして、だから停めるとか失敗させるなどということでは決してありません。基本的には、あくまで「差し迫った危険があると判断した場合に制止する」ということでありますので、誤解されませんよう。ともかく、危険かどうかの判断は、あくまで現場の状況に即して、指揮班長が積極的総合的に、即時決定するということです。
 ・・・よろしいでしょうか。えー、それでですね。班長の指示があった場合には、ただちに信号係が信号を赤に切り替えます。同時に、隊員が即時車両の前面に出て、制止します。
 「危険ではないか。
 「もちろん、隊員の安全確保は最重要条件です。その点についてはしかし、さきほど申しました通り、模擬訓練を繰り返し十分行って来ておりますので、ご安心ください。
 「ちょっと待て。私は、さきほどから黙って聞いていたが、最初から交差点で突如制止するという作戦行動とかを決めておって、しかも前から模擬訓練までしているということはどういうことだ。おかしいではないか。
 「いえ、それは、そう決めているということではありません。これまでの経験からして、この団体の場合、そういった場所で制止が必要な危険な状況になる可能性が高いということでありまして、それで、そういった事態が起こった場合を、あくまで仮に想定した訓練ということです。
 「危険な事態が起こった<場合>というがね。どうもその辺が問題だ。失礼ながら、さきほどの訓辞も、聞きようによっては過剰警備を煽るようなことになるのではなかと危惧している。積極的といっても、われわれの任務はあくまで法を守り安全を守るということだ。積極的、総合的に危険性を判断をするとか、抽象的な言い方をしているが、結局それは、現場で指揮をとる班長の判断でやるということだろう。それで大丈夫だろうな。間違っても過剰警備とか不当逮捕として問題化しないよう、冷静に法の範囲内で行動しなければならない。
 「はい、それはもう、全くもっておっしゃる通りです。もちろん当方の行動は、全て合法的に遂行されます。ですからこそ、正当かつ合法的な公務執行に対する抵抗や妨害の行動が、全て公務執行妨害をはじめとする違法行為ということになるわけでして・・・(続)