この世の真実

 「この世の真実を私は悟った。一言でいえば、何もないということである。この世の中には、何もない。善もなければ悪もない。だから、私には悩みがない。もちろん自分の過去への反省もない。後悔もない。悔やんでいることもない。」(『週間現代』記事の記憶に多少手を加えた。惜しくも廃刊とのこと
 宗教家のことばである。
 宗教家のことばにふさわしい。
 いや、実はそうでははない。駅を駆け抜けながら無差別に二人の命を奪った被告のことばである。
 「私は悪いことをしたわけではない。殺人は悪いことではない。先日秋葉原で10人を殺した犯人は、私のまねをしたといっているらしい。人数の点で私の事件の影が薄くならないか少し心配だが、何にせよ模範になるのは悪い気持ちではない。」
 ここから、宗教の方へ考えを進めるべきか、犯罪の方へか。あまりも重くて、立ち止まったまま、どちらにも行けない。