日向子さん

 ここのところちょっと忙しく、更新せず、してもろくなことを書いていません。
 いや、じゃ以前はまともなことを書いていたのかといわれると困りますので、忙しさのせいにしたことは取り消しますが。
 ともかく、事実、少し忙しいのです。
 なのですが、『ユリイカ』が杉浦日向子特集を出していたので、買いました。
 それで、あ〜まずかったなあ、と思ったことが、ひとつあります。隠居のことです。 
 日向子さんについて、特にまとまったことを書いたことは全くありませんが、昔、彼女が「隠居」宣言をしたとき、「もっと描いてほしいのに」というようなことを、ちらっと書いた記憶があるのです。もしかすると、書いたというのは間違いで、ただそう思っただけだったのかもしれないというほど、ほんの軽いものでしかないのですが。
 ところが、「隠居というのは世間向けで」、やはり病気が訪れていたのだということです。身体的な問題だったのでしょうか、気持ちの問題だったのでしょうか。テレビで拝顔して体調について少し予感がなくはありませんでしたが、それでもテレビやソ連やで活躍?されていましたので、やはり「隠居」は「隠居」だと単純に思っていました。
 もちろん「隠居」は「隠居」なのでしょう。でも、隠居にも、もてあます長い余生を愉しむ隠居もあれば、限りある余生ゆえの隠居もあります。すごい嵐の船で湯が大波の風呂に入るひとり船旅など、笑ってだけ読んでいましたが。
 あ〜まずかったなあ、といっても、吹けば飛ぶ以前に塵となって既にないほどの言葉を、昔書いていたとしてもいなかったとしても、実際には全くもって何も関係ありません。ただ、「隠居」ということを聞いて、「もっと描いてほしいのに」としか思わなかった私の気持ちが、あ〜まずかったなあ、と今更ながら思うわけです。
 人は、夭折ゆえに惜しまれるのでしょうか。惜しまれるがゆえに早世するのでしょうか。それぞれみんな、人は見えないものを抱えています。「隠居」ということを聞いて、ただ「もっと描いてほしいのに」しか思えなかったのは、あ〜、まずかったなあ。