大変ですねえ 

 世の中がこう大変になってくると、いいことなんてまるでありませんが、もしかすると唯一、「どうやらみんな大変なんだなあ」という気持ちをもつ人が増えているのかもしれないというのは、悪いことではないかもしれません。少なくとも、バブル期のように、みんな儲けてやがるのだろうなあ、という気持ちをもったりするよりはマシでしょう。
 ある人が、新聞の集金に来た中年女性の目の前で財布を開き、「2ヶ月分払います」といって1万円札を渡したところ、お釣りを数えながら、その人が、「年金生活だのに、すみませんねえ」、といったそうです。ほんとに年金生活なのかどうかは知りませんが、どっちにしても、もちろん怒ったりしてはいけません。彼女は、その人の経済状態のことをいったのでは決してなく、「こんな時代でねえ、私もそうですが、みなさん大変ですよねえ」、といったのです。 
 賃下げ派遣止め首切り自由の時代にもかかわらず、いやそれ故にこそ、株主への配当と役員報酬は凄く増えたそうですね。もちろん、そういう人々は何もいわず、寒空に玄関をまわる集金女性が、「すみませんねえ」というのです。