一億総警察ドラマ

 海苔Pが逮捕されました。
 マスコミは、前半には、「家族の責任だと強く感じて自殺するのが心配です」、という趣旨の所属事務所社長の発表を何度も流し、「みんな心配してします」というスタンスを作って、あちこち大騒ぎ。ところが、逮捕状発行という警察の発表があると、今度は一転、「やはり前から兆候がありました」というスタンスで、あれこれ叩き出してまた大騒ぎ。いかにもマスコミらしいやり口だといえばそれまでですが。私はへそ曲がりなので、そうなると違うことも書きたくなります。
 振り返れば、最初からおかしなことだらけでした。
 身を隠していると思われていた前半期間に、彼女の携帯の電波は山梨で消えた、という情報が流され、ATMで何十万円引き出した、量販店で下着をたくさん買った、などという情報も流されました。
 しかし、その段階では、彼女は、令状で認められた容疑者でも何でもなかった筈です。容疑者でもない人の携帯個人情報を、携帯会社は簡単に警察に教え、マスコミが公表することを許したのでしょうか。自ら尾行していたのでないとすれば、警察は都下の銀行や販売店などなどに容疑者でもない人の録画のチェックを指示か依頼かし、また銀行や店は情報提供に簡単に応じたのでしょうか。それとも、彼女の顔を見た行員や店員が、自ら警察にタレこんだのでしょうか。しかし仮に、家族が逮捕された傷心のタレントが、どこかの店に顔を隠すようにして立ち寄り買い物したとして、店員は、何を買ったかというようなことまで、わざわざタレこんだりするでしょうか。
 鍵になるのは、所属事務所が、異例に早く失踪届だか保護願だかを出したことです。
 誰かが逮捕されると、家族のところにマスコミが殺到します。有名人の場合にはその騒ぎは数倍するでしょう。しばらくマスコミから身を隠していたいと思うのは、ある意味当然のことではないでしょうか。少なくとも異常事態ではありません。所属事務所であれば、余計に、そんな行動を理解して、そっとしておくのが普通でしょう。ところが事務所は、彼女が殺到するマスコミから身を隠しただけかもしれない非常に早い時期に、早くも届けを出し、会見を開いて、「早く届けたのは最悪の事態が心配だからです」、といいわけをします。もしもですが、それが、警察から迫られた、あるいは協力依頼された、あるいは乗せられた、行動だったとすればどうでしょうか。
 普通警察は、家族や社員が昨日から帰らないのですがというような失踪届を出しても、大人が自らの意思で身を隠したらしいケースでは、すぐに動いてくれることは全くありません。しかし、もし警察が、前からその人物に目を付けているのだが確証が掴めないというような場合には、届けが出たことを最大限に利用するでしょう。自宅をくまなく探しまわったり、見つけた髪の毛のDNA分析をしたり、立ち回る可能性のある銀行や各店にビデオチェックを要請したり、また、携帯の通話記録を調べたり、電波の発信場所情報を調べたりなど・・・、大抵のことが、「容疑者ではないので令状はありませんが、しかし保護要請が出ていますので協力してください」、という大義名分でやれるでしょう。もしかすると生命がかかっているなどといわれれば、拒否するのは大変難しい。
 それだけではありません。事務所の異常に早い届け出をもとに、マスコミが、「最悪の事態が心配だ」という世論誘導をしたことが大きな効果をもちます。全国の視聴者は、容疑者でもない人の個人情報が次々と流されても、全くそのことに疑問をもたず、それどころか、早く見つけてあげて欲しいと願い、彼女を見かけた店員は、同情的であればあるだけ、そっとしておいてあげようと思わずに、「早く保護してあげてほしい」と、警察なり事務所なりに、善意のタレこみをすることになります。
 少なくとも前半には、全国のほとんどの人々が、彼女を傷心家族だと思っていた筈です。ところが、そんな彼女の個人情報が警察マスコミの手で勝手に調べられ流され、人々もまたそのことに疑問をもつどころか、むしろ警察やマスコミと一体化して、誰もが彼女を追い回しタレコむ心境になっていたのでした。まあ、誰もが疑問をもたなかったというのは言いすぎで、テレビなどでそんな発言をしたコメンテーターもいたかもしれませんが、私はほとんどフォローしていないので、知りません。
 一方、海苔P自身はといえば、自殺するかもしれない失踪という警察マスコミと事務所の作った筋書きをよそに、最初から、身体から薬が抜けるまで身を隠す作戦だったのでしょうか。しかし、保護という名目でか髪の毛を採取分析されたことで、彼女の作戦は失敗に終わったようです。
 確かに彼女の周辺にはまだまだ闇の人脈が拡がっているのでしょうし、自分のした事の責任は、当然取らねばなりません。だとしても、今回の逮捕劇そのものについては、海苔Pも私たちも、警察マスコミ一体で演出された国民総警察とでもいうべきドラマの掌の上で、ただ踊らされていたのかもしれません。
 警察発表一枚でコロッと態度を変えたマスコミは、出頭逮捕された海苔Pが移送される自動車の様子を放映しました。営業P顔とはかなり違っているなあ、だけど覚悟を決めたのか毅然と前を見据えている顔はカッコいいな、などと思ったのですが、今日の新聞を見ると、あれは女性警官で、Pは後で俯いていましたね(^o^)。
 彼女周辺の闇の人脈がきちんと暴かれるかどうか。彼女自身が、このことで虚像の人生から解き放たれ、しっかりと歩み直す道を見つけられるかどうか。難しいかもしれませんが、せめて彼女の今後の人生に声援を送っておきましょう。