方言植物園

 (承前)そういえば、NHKの朝ドラでは、各「地方」が舞台に取り上げられます。ご当地の方々はもちろん大歓迎なんですが、少なからぬ方々が、「でも、話される「方言」がもうひとつオカシいよなあ」、と感じておられるのではないでしょうか。クレジットを見ると、ちゃんとご当地話者の「方言指導」があるらしいのに、やっぱり<にわか仕込み>じゃ仕方ないか、と思っておられるのだと思います。もちろん、それはその通りなんでしょうが、それだけでなく、むしろNHKの確信犯的な指示もあるようです。いつかラジオで言ってましたが、完全に方言にしてしまうと、全国の視聴者には分からなかったり、理解できても違和感がありすぎたりするので、わざと純粋方言にはしていないとのこと。
 いわゆる「国語元年」以後、「標準語」の推進あるいは強制の大本営であったNHKは、今では、朝ドラだけでなく、「日本語塾」とかいう教育番組などでも、様々な「方言」を大事にしている姿勢を示しているようです。「生活感溢れる方言」が、日本語の豊かさを支えているのです、というように。
 けれども、グローバルとローカル、つまりオープンとクローズというのは、なかなか難問です。「朝ドラ方言」もまた、いうならば、ローカルな生活の土から引き抜かれてNHK植物園に移植された、各地の標本草木のようなものだといえます。もちろん、この場合も、説明掲示板やパンフは、当然、かつての「標準語」である「共通語」で書かれます。