魂抜け(たまぬけ)

 芥川賞がまたも該当者なしとなったらしいですね。そのことについては、そうですかというだけですが、今回の選考では、合作の候補作品があったこともあって、シンタロウ氏らが、「純文学というのは魂を描くものだ」とかいうようなことをいったとか。暗黙のうちに、直木賞は「大衆」「娯楽」だが芥川賞は「魂」だ、と見下した物言いです。ちょっと変わった文体でちょっと変わった状況を小綺麗に描けば「純文学だ」と持ち上げるのですから、シンタロウ氏以下の選考委員なんてチョロいもんだと思っていましたが、「魂」と来ましたか。
 なるほど、だから桐野夏生は困った人なわけですね。直木賞作家なのに『魂萌え』なんてものを書かれると「魂」だから芥川賞だし、候補にして受賞させないというのは、困った末のことなのでしょう。
 改めていうまでもありませんが、とっくの昔から、「純文学は死んでいる」といわれています。誰も読んでくれないのは、みんなが「魂抜け」だからだ、東京オリンピックを誰も応援してくれないのはみんなが腑抜けだからだ、なんて、多分毎日愚痴っているのでしょう。