北のような国になりたい

 福島も沖縄も憲法原発もTPPも増税も福祉もその他全ては遠くのこと先のこと、とにかく今日明日、目先の景気だ、という予定通りの結果になりました。もちろん景気とやら自体が怪しいのですが、それもまた先のこと。
 いま民主主義といわれているシステムは、いうならば表層主義であって、つまり、「真の民意」とかいったものは認めないのですね。そんなものを認めると、「真の民意我にあり」というクーデターや革命といった、このシステムにとって絶対悪の事態が起きかねませんから、そんなものはない(観念でしかない)、表に表れたものが民意なんだ、ということになっています。
 ただ、今浮かんだ考えの集合体である「表層的民意」には、目先のことに流されて、バカな決定をしてしまうという危険性があります。この大きな弱点をカバーするために、このシステムには、長年の智慧で、いろんなチェック/ブレーキ装置がつけられています。いってみれば、「気にいれば買う」という目先買いは詐欺にひっかかったり無駄な浪費をしたりしてしまう弱点があるので、「すぐ決めないで一日置こう!」とか「趣味の異なる友人の意見も聞こう!」とかいうような「生活の智慧」ですね。いまはライフハックとかいうようですが(^o^)。
 ところが昨今は、そんな智慧が悪者扱い。「いろんな意見があるのはいかん」「議会のネジレはいかん」「すぐ決められないのはいかん」、とメディアも騒ぎ立て、結果、「党内一致、ネジレも解消。決められる政治! 即断即決、即行します!」が大勝したのでした。与党だけではありません。野党の方でも、「ブレない党」とか「内部に異論のない党」とか「私が決める、ダメなら落とせ」とかが売り物になるようですから、今やどこもかしこも「即断即決」だらけ。
 どうやら、「すぐ決められない智慧」「異論が多く出る智慧」つまり「ゆっくりガヤガヤ」で何とかやってゆこうとしてきたこのシステムが、今や金属疲労を起こしていると判断されているような気配です。
 「ニュース」の中に、日経平均とか東証指数とか為替相場とかの数字が当然のように必ず出るようになったのは、いつ頃からでしょうか、しかし考えてみると、「福島も沖縄も憲法原発も・・・・遠くのこと先のこと、とにかく今日明日、目先の景気だ」ということはつまり、世間の人々の眼が、「甲状腺被曝した福島原発作業員は報告書の10倍以上」とかいった諸々の出来事より、上下する株価や為替相場の数字こそ向けられているということでしょう。そのうち、「では7時のニュースです。いつものように、本日の株価動向からお伝えします。その後天気予報、スポーツニュース、最後にその他の政治社会雑報という順序になります。それでは・・・」というようになるのかもしれません。
 アナウンサーが「えー、1ドル98円36銭、あ、今変わりました90銭」などという程、時々刻々乱上下する株価や為替にこそ文字通りの「ニュース(新情報)」価値がある時代。ケーキケーキとせがむ子どものように、目先の株価や為替相場から投票先を決める時代。「すぐ決められない」「異論が多く出る」ことがむしろ「智慧」であったなどというのは、今は昔の時代遅れ。マスコミも率先、「ネジレ解消」とか「すぐ決められる政治」だとかを待望し、予定通り、即断即決に大勝させた、とまあそういうことなのでしょうか。
 「謹啓。一言、大勝の御挨拶を申し述べます。貴国の一党独裁超長期政権には比べることもできませんが、わが国民はこの度私にも、一党大勝長期政権を委ねてくれました。あなたが決めればあなたの国がすぐ動くように、私にも、私が決めればこの国がすぐ動くようにせよ、というのが民意と、緊褌の意を強くしております。わが国民は、表面ではあなたの国をしきりに非難しますが、核武装までしようかという強気強気の軍事姿勢を、実はうらやましく思っているようです。もちろん、国民が互いに敵視しあい怖れあっている方が、我々も万事何かと好都合ですから、今後とも敵視政策は続けますが、あなたも三代目、私も三代目。お互い今後とも、即断即決の強気姿勢で近隣東亜の緊張をほどほどに維持してゆきましょう。敬白。・・・追伸、ご祝儀として、拉致の方でご考慮頂ければ幸甚です。」