「楽しい」時代3

 閉じられることで完結する小世界。それが楽しい世界であるなら楽しくないものは排除され、安全で清潔な世界であるなら危険で不潔と思われるものは締め出されねばなりません。例えば「ホームレス」。
 そういうことでいえば、ディズニーランドこそ、「巨大」で「完璧」で「思想」をもったワンダーランドだ、と東氏はいいます。ご家族で一週間ほどディズニーランドを楽しまれたそうですが、空港を降りた瞬間から完璧に閉じられた世界に連れ込まれ、指紋認証をして個人情報の入った腕輪をつけることで、完璧にサービスシステムの管理下に置かれて楽しませてくれる。最初の構想段階から、ディズニーは、全てを備えた王国として、ディズニーワールドを作ろうとしたということです。
 ちょっと横道ですが、福井次郎『マリリンモンローはなぜ神話となったのか−マッカーシズムと1950年代アメリカ映画』という長い表題の本によれば、若い頃のディズニーは、自分のスタジオでの争議の際に「それをユダヤ人に操られた国際共産主義者の陰謀」だと考え、そこで「マッカーシズムの時代、ディズニーは共産主義と戦うというお題目の下、徹底的なユダヤ人いじめに向かう」ことになったとのことです。忌まわしい危険なものを徹底的に排除することで楽しい自分の王国を完結させるという「思想」は、その頃からのものかもしれません。
 いや別に、単純に非難しているのではありません。趣味の世界では、例えばガンプラや関連グッズで完結させようと思っている小世界に汚れた洗濯物などがあっては興ざめですからね。ホームレスにしても共産主義者にしてもユダヤ人にしても。(続く)