<変>な広告(4):片ヒゲ美人

 こういうものを取り上げ過ぎるのはどうかと思うが、脱毛剤を取り上げたので、逆の毛生薬の広告も紹介しておこう。

 『毛生液』である。「もうせいえき」とルビしている。
 小さい広告であるが、美女の顔についているのは印刷汚れではない。ヒゲである。しかも片方!
 「本剤は第一毛をはやし」ということで、女性が顔に「本剤」を塗ってみれば、あら不思議やな、こんな立派なヒゲが生えます・・・ということなのだろう。
 「毛なきに用て毛はえる事妙也」・・・って、こんな「片ヒゲ」をはやしたい女性がおるか?「そんな奴おらんでぇ」。
 とはいえ、この「毛はえる事妙」なクスリは、それほどいい加減なものでもなかったらしい。もちろんちゃんと調査などしたわけではないが、私が発見したものだけでも、少なくとも明治末に既にあり(明44.3.27.大阪毎日)、また大正に入ってからも、かなり長期にわたって散見される。広告はレイアウトもデザインもほとんど同じだが、それぞれ文面が多少異なっているだけでなく、「片ヒゲ美人」も微妙に違っているのが面白い。右に顔だけを並べておくので、十分心してご覧ください。(左から、大5.9.16,大阪毎日、4.4.24.同、10.4.15.東京日々)
 それにしても、しきりに、「愛国堂の名義に御注意」とか「偽物有片ヒゲ美人の商標に御注意」とかアピールしている。偽物有って、ホントかね。