ハーフ&ハーフ(4)

 どうでもよい話ながら、はじめてしまったので、あと2回だけ。
 藤原第2アタックまでの話をした。<ハーフ&ハーフ>に更に同量の黒ビールを混ぜたものを<スリー・クオーター>という。ほんとかね。ゆうべ試してみたら、ほとんど黒ビールの味だった。
 さて、仕切直して純血に戻ったと仮定した上で、第3アタックに目を向けよう。かたや名誉会長一統の本家は、まわりが次々と身に覚えのない謀反の罪で殺されてゆくので、いつも酔っぱらいのアホを演じて若い時代を乗り切ったといわれる49代仁明会長。対する藤原組の総長は、両親とも藤原一家という堂々たる血統の藤原冬嗣。図は、49代から60代醍醐会長までの藤原アタック系図である。ただし、ビールじゃなかった遺伝子受け継ぎの本流に関係ない人は全て省いて、最簡略に書き換えている。
 実際のアタックはもっと凄まじいので、調べたとしても図には描ききれない。例えば図の右端に、藤原組の「基経」組長がいる。父母とも藤原という文句なしの純黒ビールであるが、図ではただ、妹の高子が56代の女御となったことと娘穏子が60代に嫁いだことだけが記載されている。しかし実際には、彼は、妹の相手である56代の同じ後宮に、娘の頼子と妹子も送り込んでおり、さらにもう一人温子も59代の元に送りこんでいるという、実に物凄いアタックである。
 おかげで基経組長は、おそるべきキングメーカーとなる。妹が56代に嫁いで産んだ子が、9才で名誉会長になると、基経はその「摂政」となるが、しかしこの会長は悪ガキだったので、怒った基経は、有無をいわせず彼をやめさせ、自分の従兄弟にあたる人物を58代会長にしてしまう。という具合で、次の59代も彼にはすっかり頭があがらず、名誉会長とは形だけの存在でしかないことを思い知らされる。
 いや、そんなことはどうでもよい。ビールである。図では、1世紀半ほどの間の有効アタック線5本だけを記載したが、例えば、54代→55代→56代→57代という連続ミキシングの部分を見て頂きたい。いうならば、黒ビールを半分入れてハーフ&ハーフを作り、それにまた同量の黒を混ぜ、もう一度同量の藤原ビールをミックスしたようなものだがら、「どうぞ」といわれても、これはもう素人なら見分けがつかない。「え?藤原ビールでしょう?」てなところであろう。
 いや、もちろん分かっている。人間、どうとでもとれるのである。「どう?タレの味が違うでしょ?タレが。この店はサ、創業が慶長年間というからすごいでしょ?でもって、このタレはサ、創業以来、同じ湯浅醤油を継ぎ足し継ぎ足しして、代々受け継がれて来てるんだヨ。だから、そこらの店は絶対かなわないわけ。何しろ慶長何年か以来、連綿受け継がれて来たタレだけんネ。」「継ぎ足し継ぎ足しで・・」「そう。継ぎ足し継ぎ足しでネ」「な〜るほど。やっぱ違うねエ・・」・・・てなことになるのであって、「な〜んだ、それじゃ実質、湯浅醤油じゃん」なんてことは、決して誰もいわないのである。