妖怪の孫が突破する

 ジングルベルの鐘の声、諸行無常の響きあり、驕れる者は久しからず、五輪の事は夢のまた夢・・・となりましたが、ちょうど1年前、圧勝当選した時の報道写真を見ると、背後のポスターに書かれている大きな文字が、「決断、突破、解決力」。
 ご承知のように、憲法で「国権の最高機関」とされているのは、国会であって、政府ではありません。案件を議論して議決つまり「決定する」のが国会で、その決定に従って実際に実行、実施するのが行政府の仕事です。ところが昨今では、実質的に「決定する」のは首相率いる政府であって、国会は単なる諮問機関、むしろ翼賛機関だといわんばかり。野党はもとより与党でさえろくに議論もできません(ましてや、パブリックコメント公聴会はゴミ扱いで、デモはテロ扱い)。「官邸で決めたので、一応説明だけします。ただし質問や意見は聞きおくだけです。ぐずぐずせずに、了承してもらいます!」。
 しかしながら、そんな首相そんな政府にまかせたのは国民です。国民は自分にあった政府しかもつことができない、といわれる通り。「景気が悪い中国が悪いあれが悪いこれが悪い。何とか「トップ」の為政者に、道を選んで「決断、突破してもらいたい」。ということで、東京都民も大阪府民も大阪市民も、オレが決めるオレがやるという「決断、突破」のオレオレ様に圧倒的な票を集め、全国の人々もまた、オレオレ首相に、勝手放題の「決断、突破」力を委ねたのでした。
 とはいえ・・・観客様はみな鰯、あれから一年たちました、ゆあーんゆよーんゆやゆよん、ジングルベルの鐘の声、諸行無常の響きあり、大阪萎れ東京も、驕れる者は久しからず、残るは岸信介の孫ばかり。
 あ、みなさん、安倍晋三氏が岸信介氏の孫だということはご存知ですよね。それから、岸信介という人がどういう人物かということも。念のためごく簡単に紹介しておきますと、商工官僚から大陸に渡って満州国に君臨し軍財官界はもちろん闇の世界にも人脈を築き莫大なアヘン闇資金を手に東京に戻って東條内閣の商工大臣となりA級戦犯被疑者として逮捕されるも反共主義者として利用しようというアメリカの態度変更で不起訴となり密かにCIAの資金で活動し公職追放から復活して首相となるや在日米軍に対する裁判権放棄を密約隠蔽したまま国民の大反対運動を無視して安保条約改定に尽力するなど戦中戦後の闇の政治世界を歩き通して「昭和の妖怪」と呼ばれた人物・・・・・・
 観客様はみな鰯、あれから一年たちました、ゆあーんゆよーんゆやゆよん、ジングルベルの鐘の声、諸行無常の響きあり、大阪萎れ東京も、驕れる者は久しからず、残るは闇妖怪の孫ばかり。