ベラスケスの鏡1(脱線:別姓問題)

 おめでとうということばさえ憚られる年の明けです。
 内外、余にも余りな世の中に、何を書く気にもなれないまま、年を越してしまいました。しかし、こんなブログでも、長い中断を心配して下さる方も皆無ではないようですので、何を書いたことにもならないことでも、少しまた書き始めてみようかと思います。
 しばらく、ベラスケスにします。
 ディエゴ・ベラスケス。ほんとはもっと長い名前ですが、普通はこう書くようです。
 名前と言えば(と早速脱線ですが)、いま大変大きな顔をしている国会多数派の連中の本音が、暮れに明らかになりました。彼らは、「娘を切り捨てたい!」と考えているようです。だって、「同姓こそ夫婦親子の絆」といいつつ「圧倒的多数の女性が(結婚すると)事実上改姓を強いられる現状を変えたくない!」ということはつまり、「いずれ娘には姓を変えてもらいたい=<絆>を切りたい!」ということですからね。
 しかし、いくら現行法制度を死守したところで、例えば国際結婚による別姓の増加、職場等での社会的な夫婦別姓の増加、離婚再婚等に伴う改姓や親子別姓の増加、などといった進行中の事態は止められません。あるいはまた、同姓の子が守れなくなって放置される同姓一家代々の墓が増加中で、お寺さんが困っているというではないですか。同姓死守派がどうあがいても、いずれ「同姓の絆」なんてものは消えてゆくでしょう。
 例のマイナンバーというものについても、マスコミは表面的な見方しかしていませんが、あれも、明治以降の「戸籍=家=姓」支配の崩壊を見据えて、「戸籍=姓」支配を「個人」ナンバー支配に変えてゆこうという、(政治家などより悪知恵にたけた)国家官僚の遠謀に発するものに違いありません。「別姓でも旧姓でも通称でも芸名でも勝手にしろ、徴税をはじめ公的管理は全てナンバーでやる!」、ということなのでしょう。
 とはいっても、いまのところ、国会では、改憲でもしようかという圧倒的多数派が我が物顔で、「同姓こそ絆」という馬鹿げた観念に基づく制度を変えることなどありませんから、このままでは、別姓が法的に認められるまで、まだまだ時間がかかります。
 ということで、やはりここは、「世界愛人主義同盟」秘書課勤務、村野瀬玲奈さんのご提案しかないでしょう。詳しくは村野さんのサイトを見ていただくことにして、簡単勝手に紹介させていただけば、こういうご提案です。
  第一条 婚姻するカップルは、どちらも確率が半々のくじを引いて、どちらの姓にするかを決める。
  第二条 婚姻するカップルは、くじで決まった姓を婚姻後の共通の姓とし、他方の者は改姓する。
  第三条 婚姻前に一方の子であった者も、婚姻後に生まれた子も、親と同じ姓に決定または改姓する。
 このような制度にすれば、夫婦親子は同姓ですから、「夫婦親子同姓で絆をまもりたい」という人々は満足するでしょう。
 また、「圧倒的に女性が改姓を強いられる現状は、男女平等という憲法の主旨に反する」という批判もかわせます。
 どうですか、名案でしょう。しかし、村野さんのご提案は、さらにすごいのです。
  第四条 婚姻により改姓する者の(実家の)両親も、同じ姓に改姓する。
 確かに! これによって、夫婦同姓だけでなく、新夫婦と親子関係にある者は、全て同姓になるのですから、夫婦親子が別姓になる=絆を失ってしまう、という問題が解決されます。
 自民党政府の、「家族の一体感のために夫婦は同姓でなければならない」という時代遅れで両性の平等を尊重しない主張と、憲法で保障されている両性の平等をともに尊重した法改正の提案です。ぜひ国会にはかりたいと私は思います。これは、夫婦同姓強制論者には歓迎される法改正のはずです。選択的夫婦別姓制度が日本で受け入れられるにはまだ何十年、ひょっとしたら何百年かかるかもしれませんので、経過措置としてこの法改正を自民党議員や夫婦同姓強制論者は受け入れてほしいと期待します。一方、選択的夫婦別姓を願う方々は、一歩回り道ではありますが、この法改正を自民党に対して陳情してはどうでしょうか。」(村野)
 すばらしい案ですね! 「夫婦と親子の絆を同姓で守れ」という人々も、「両性の平等を守れ」という人も、共に賛成する筈のこの案に、私も大賛成です。
 ただ、陳情を有効にするためには、もうちょっと花を持たせてあげてもいいかもしれません。何しろあの党というのは、権力や財産を持っている人たちや大会社を経営している人たちのことを真っ先に考えますから、子供がくじで<敗れた>場合、「先祖代々由緒正しいこの姓を何と心得る」とか、実家の親も改姓?「私の物凄い財産の名義を全部書き換えよというのか」とか「私の姓をつけているわが社の社名まで変えよというのか」とか「私のような有名大スターに名前を変えよというのか」などなど、庶民には縁のないそんな反対意見が、支持者から出てきそうですから。
 そこで、上記の村野同姓法に合わせて、「姓交換」を認めればどうでしょうか。
 あの人たちの好きなのは、国家管理と市場主義ですので、一方で国家管理を厳しくして抜け道をふさぎ、その上で、市場にゆだねる道を確保するのです。例えば、
  施行規則第一〜第五(省略=くじで決まった姓を使わないですむ抜け道をふさぐ諸規定)
  規則第六 婚姻後の姓は、婚姻届に先立つ一か月以内に、予めくじを引いて、仮決定しておくことができる。仮決定した者には、有効期間1か月の「○○姓、仮決定書」を発行する。
  規則第七 「仮決定書」の有効期間中に婚姻届を提出しなかった場合、10年間は同じ夫婦の婚姻を受け付けない。また10年以後に再婚する場合も、くじの引き直しは認めない。
  規則第八 仮決定した姓の「仮決定書」は、届けるまでの有効期間中に、他の姓の「仮決定書」と交換することができる。ただし、交換した「仮決定書」による婚姻および改姓届は、交換した両者が届を出した時点で、同時に受理する。
 どうでしょうか。こうすれば、権利書のオークションとか、権利書交換市場が生まれないでしょうか。何しろ資本主義社会なんですから、「「安倍」売ります。有効期限切れ間近につき超安値」などと。
 脱線が過ぎました。ベラスケスに戻ります。(続く)