ベラスケスの鏡2

 さて、ベラスケスです。といっても、大したことを書くつもりはありません。
 ディエゴ・ベラスケスは、あのクロムウェルと2か月違いで生まれ2年違いで没した17世紀の人で、レンブラントと共にこの世紀を代表する大画家ですが、そのベラスケスに、「ラス・メニーナス」という題の有名な絵があります。もともとの題ではなく、画を保管する際の整理符号としてつけられた題のようですが、「侍女たち」とか「女官たち」とか訳されています。宮中に働く女性たちですね。、
 大変大まかにいうと、大抵の画が教会のために描かれた昔と、富裕市民のために描かれる来るべき時代との間に位置するこの頃の画は、王侯貴族のために描かれることが多いのですが、ベラスケスもまさに典型的な宮廷画家で、スペインのフェリペ4世に仕え、侍従としての仕事もしながら、画を描いたようです。宮殿内に与えられたアトリエには、時にフェリペ4世が訪れて、ベラスケスが画を描くのを見ていたりしたとのこと。で、「ラス・メニーナス」もまた、そのアトリエで描かれた画であり、かつ、そのアトリエを描いた画であり、アトリエで描いている自分を描いた画でもあります。
 しかし、ベラスケスはこの画で何を描こうとしたのでしょうか。また画中のベラスケスは何を描いているのでしょうか。・・・から始まって、この画については、謎が多く、それに応じて、多くの研究がなされています。ウィキペディア「ラス・メニーナス」の項は、それら内外の多くの史料や研究書にもとに、充実した内容の解説をしてくれていますので、是非ご参照ください。
 しかし、この画に関心をもつのは美術史の研究者だけではありません。ピカソを始めとする画家たちはもちろんですが、ご承知のように、例えばフーコーの『言葉と物』の冒頭にも、この画についての長い分析があります。
 ところで、ウィキの解説にもあるように、この画の謎のひとつは、中央奥に描かれた「鏡」です。で、鏡といえばラカン、というわけで、ミシェル・テヴォーという人の『不実なる鏡−絵画・ラカン・精神病−』(岡田,青山訳、1999、人文書院)という本があるのですが、先日、ちょっと関連することがあって、この本を読んでみたところ、「ラス・メニーナス」についての新説が書かれていました。今回は、この新説(もはや「新」とはいえないでしょうが)について、少し余計なことを書いてみたいと思います。
 あ、申し遅れましたが、肝心の「ラス・メニーナス」の画を示していませんでしたね。見れば、「ああ、あの画か」と思われるに違いありませんが、画の確認も、上記のウィキでお願いできないでしょうか。なにとぞよろしくお願い致します。(続く)