終わりの始まり?

 突然の解散です。
 何本矢を放っても、株高と円安から先に進まず、肝心の目標値は遂にマイナス1.6ですが、「いや、必ずこれから成果が出る」と、ホントにそう思っているのなら、解散は先に延ばした方が当然有利。「早期解散はアベノミクスへの自信喪失の表れ」という、小笠原誠治氏のことば通りでしょう。
 大体、アベノミクスというのは、金融操作で物価の上昇率を上げ、買うのは今でしょ!と「思わせて」国内需要の上昇で景気を押し上げようという、リフレ派「マインド」コントロール政策です。そういえば先日の追加緩和も、「予想」外に「驚かせ」ようというマインドショック狙い。
 といいましたが、デフレ「停滞」を「成長」へと転化させ、その勢いで財政再建、という二兔目標そのものは、与野党を問わず共通の願望です。いや、国内だけではありません。例えば先日のG20でも、「停滞」はダメよダメダメ「成長」こそが世界の共通目標、ということが再確認されました。
 ただし、その会議を伝える記事は、こう続いています。「だが、世界経済は停滞し、目標達成の道筋は描けていない」、と。資本主義「先進国」が軒並み先の見えない「停滞」状況に落ち込んでいる現状は、いわゆる景気循環の一過程としてのデフレ状態にしては深刻すぎます。
 資本主義とは、投資して儲ける、つまり資本が利潤を生むというシステムです。ところがいまは、金利を極限にまで下げて、金はいくらでも貸しますよといっても、誰もその金で利潤を上げられない、儲けられない。
 水野和夫氏は、「資本主義の終焉」、「死期」だ、と書いています。資本主義というシステムは、「中心」で資本が自己増殖を推進していくために、「周辺」すなわちフロンティアを不可欠とする。ところがそのフロンティアが、もうどこにもなくなり、資本が自己増殖するというプロセスそのものが動かなくなっている、と。
 とはいえ、氏は悲観論者ではありません。デフレと超低金利という「停滞」現状は、むしろ資本主義を静かに終わらせ、次なる新しい「脱成長」システムの構築へ進むべき絶好の時期であり、停滞の最前線にいる日本は、「成長」資本主義から真っ先に「卒業する」位置にいる、というのが氏の意見です。とはいえ、それでは新しいシステムはどんなもので、どんな道筋でそこにソフトランディングできるのかといったことについては、その道を見つけて踏み出すのは「今でしょ」、というに留まっています。
 そういえば、利潤率逓減法則というのがありました。妖怪はとっくに死滅したか変容してしまっていますが、ソフトランディングに失敗して、世界同時の「火の十日間」などが起こると物騒です。
 最近みつけたのですが、4年以上前の10年夏、マツコデラックスと中村うさぎの両氏が、こんな対談発言をしています。
 「景気が悪くなったって言うけど、景気が悪いんじゃなくて、そういう水準の国になったのよ。」
 「「打つ手なし」みたいな状況に来てるのに、成長一辺倒の話ばかり。」
 「あの人たちは夢を見てるんだと思う。そう言わないと支持が得られないからだろうけどね」。
 この選挙でも、またみなさまは、「成長の夢」を支持して投票するのでしょう。