帝国の慰安婦:安堵の共同性5

 (途切れないように、短くても少しだけ書いておきます。)
 前述の連続番組そのものには、通奏低音として「和解」というテーマがありましたが、総合司会者の高橋哲哉氏などが強調していたのは、とにもかくにも過去を隠ぺいすることなく、時効のない人道に対する犯罪事実を明らかにすることから全てが始まる、ということだったと思います。しかし、NHK上層部は、まさに過去の事実を隠そうとした、いや隠したのでした。
 <削除され>たのは、戦時性暴力を告発する国際法廷での、旧日本軍人の慰安所についての貴重な証言シーンです。そして、代わって<付け足された(させられた)>のが、この問題で日本を弁護し続けてきた秦某氏の、一方的な発言でした。
 で、秦氏が何をいったかというと、ひとつは「慰安婦問題にも時効ということがある」ということであり、もうひとつ、より重要なのは、「少女たちは、朝鮮人の人買いに連れて来られたり、親に売られたりして慰安婦となったのだ」という発言でした。
 今や、慰安所の存在と日本軍の関与(誘致や管理など)は、彼といえども認めざるをえません。しかし、「朝鮮人が連れてきた」のであり「朝鮮人の親が売った」のだという発言は、「だから日本軍や日本人が強制的に慰安婦にしたということではなかった」、と聞き取れますし、実際、そのような文脈で聞き取られることが狙いの、意図的発言なのでした。(続く)