F・ノート20

 つけ足し。
 公園テント住人を、「ホームレス」あるいは「野宿者」と呼ぶ背景には、<ホーム/野(ストリート)>という対比構図がある。彼らは<そと>で暮らしている。<公共の>場所で寝ている。
 法律上は公有地でも長年占有しており、テントには屋根があり家財道具がある。それでも、たとえ「ハウス」ではあっても「ホーム」ではないと見なされる。仕事をしていても夫婦で住んでいてもダメである。
 その次元では、実際のテントの<うち/そと>が問題なのではなく、いわば「まっとうな共同生活空間」の<うち/そと>が問題となっている。「市民社会」、あるいは「世間の普通の暮らし」。
 おそらく、住人たちは、ある<脱落>か<脱出>かによって<そと>に出たという起源をもつ生活者であると見なされる。その限りで、たとえどんな生活をしていても、「ホームレス」あるいは「野宿者」と呼ばれるのでもあろう。
 命名は、関わるための最初の一歩であるともいえる。いずれにしても、彼らは、「何とかしなければならない人々」である。投石して追い払ったり、強制排除−強制収容したり、あるいはまた、ある種の支援をしたり。