赤い旗の下に

 少なくともかつて中国は、赤い旗、紅旗を高らかに掲げた国であったが、チベット(だけではないが)の併合と民族自決運動への激しい軍事弾圧は、その旗の下に本格化した。そういえば中国はミャンマー軍部独裁政権をバックアップしているし、北朝鮮軍部独裁政権が掲げている旗も、ご承知のように本来よく似た旗である。
 もともと例の赤い旗は、民衆の沸き上がる力を象徴するものと思われているが、実は、むしろ逆に「戒厳令」を示す印であったという。民衆蜂起によって、あるいはそれを通してうち立てられた政権であったとしても、否それ故にこそ、階級的独裁政権として自己規定する革命政権は、外からの反革命干渉と同時に、内部の反革命の動きをたたきつぶさねばならない。思えばチベット自決への弾圧もまた、元は、おそらくそういう名目だったのだろう。いずれにしても、赤い旗は、多くの国で権力弾圧にさらされて来たし、また弾圧への抵抗を象徴してきたが、もともとは、権力的弾圧と相性が悪いというわけではないようだ。というか、ある場合には、権力的弾圧の際に掲げられもするようだ。
 しかし、いまやその旗さえどこかに行ってしまっている。いや、旗そのものは先日長野でもしきりにうち振られたようである。単に「強くて大きい」国というだけのことを表す赤い旗たちが、「弱くて小さい」声を叩きつぶすそのために。