ニュースは足が速いので、例の加藤容疑者(以下、Kと略記)も、早くも過去の人になりかけています。些細なことながら、ちょっと怪しいなあと思ったままになっていることがあるのですが、まあ多分、実はちっとも怪しくないのであって、私が勝手に怪しんでいるだけなのでしょうけれど。
というわけで、簡単にします。
警察発表や配信記事が同じで、どこも似たり寄ったりの記事文になっているので紙名は略しますが、問題の犯行日8日の後に現れた、例えば次の記事です。
(A) (Kは)、警視庁万世橋署捜査本部の調べに「勤務先のリストラ計画や処遇に不満があった」と供述していたことが10日分かった。
これを読んで、次のように感じた読者も少なくなかったのではないでしょうか。「Kという奴はどうしてあんなひどい事をしたのかと思っていたが、会社がリストラしたことへの不満も原因のひとつだったんだナ〜」、
ところがそのあと、各紙に後追い記事が現れます。
(B) 派遣先では5月末に人員の削減計画が浮上、実際にはリストラ対象ではなかったが、加藤容疑者は派遣社員がリストラされるとの焦燥感を一方的に募らせていたようだ。
(C) 5月末には、派遣先の工場で人員削減計画が持ち上がり、自身はリストラの対象でなかったにもかかわらず、同僚に不満を爆発させた。「結局いらなくなったら(クビを)切るのか」
最後のKのせりふが「同僚」への独自の聞き取りによるものかどうか分かりませんが、それを除けば、内容はほとんど同じです。
読者はどう感じたでしょうか。「Kはリストラ対象ではなかったのか。なるほど。工場はKを雇用し続けてやろうとしてくれていたのに、K本人は、「リストラされるとの焦燥感を一方的に募らせていた」。つまり、自分がリストラ対象だと誤解して不満を爆発させたんだナ」。まあ大体そういった感想でしょうか。つまり、工場は免罪。
でもそうなると、こういう疑問も浮上するかもしれません。「じゃ、工場なり派遣会社なりが、Kはリストラ対象外だと、本人に伝えていれば、誤解して犯行に突っ走るということは避けられたんじゃないか」。
そういった思いに答えるように、こういう記事が現れます。
(D) Kは犯行直前の今年5月下旬、派遣元〜から、近く派遣社員の大半の契約が解除されるとの見通しを聞かされていた。(しかし)〜6月に入り、Kは自分自身はリストラの対象外だと知るが〜。
ということで、読者のみなさんの気持ちは、最終的には大体次のようなところに落ち着いたのではないでしょうか。
「工場はリストラしなかった。また派遣会社も、リストラ計画について連絡し、Kは、自分が対象外だということも(派遣会社から?なのかどうか、肝心のことが書いていないが)知らされていたのか。つまり、工場も派遣会社も、ちゃんとしてたんだナ」。これで、工場に加えて派遣会社も免罪。
というわけで、落ち着くところは、「やっぱり、全責任はKにある。全く奴はどうかしている」。
う〜ん。細かい詮索はしませんが、どうでしょう、このニュースの流れは怪しいと思いませんか。多分私の誤解なんでしょうがね。