白洲次郎という人(21:最終)

 「・・・そして、いよいよ1月31日となった。ゼネストに備えて米軍が展開した。前日、再度マーカットからゼネスト中止を強要されるが、伊井は決行指令を取り消していない。
 ・・・だが、マッカーサーは動かないと予測した目論見は、はずれた。決行まで数時間の時点で、遂に、マッカーサー自身が、ゼネストの中止指令を出した。伊井委員長は、GHQによって強制的に連行され、NHKへ連れてゆかれた。そしてラジオのマイクに向かって、スト中止の放送を強要された。夜9時15分、伊井は、男泣きに泣きながら口を開いた。「・・・声がかれていてよく聞こえないかもしれないが、緊急しかも重要ですからよく聞いて下さい。私はいま、マッカーサー連合国軍最高司令官の命により、ラジオをもって親愛なる全国の官吏、公吏、教員の皆様に、明日のゼネスト中止をお伝えいたしますが、実に、実に断腸の想いで組合員諸君に語ることをご諒解願います・・・」。
 こうして、21ゼネストGHQと政府の手で押し潰された。伊井は、占領政策に違反したとして逮捕され、懲役2年を宣告された。」
 「そうだったのか。親父も、ラジオの前で、涙をふいていたがね。だから言わないこっちゃない、と呟いていたな。」
「伊井らにも、なお、マッカーサーや米軍への「解放軍幻想」があったみたいですね。そういえば、やがて、伊井の出身である国鉄労組が、下山事件以下3大怪事件で潰されていった、とあります。やったのは米軍諜報機関だという意見が強いようですね。彼らの方が一枚も二枚も上手だったということでしょうか。」
 「ともかく、そういう時代だったんだ。・・・「日本人はみんな従順だった」だと? 何をほざくか。「GHQに楯突いた男」をテーマにしたいのなら、GHQとつるんでゼネストを潰した吉田の腰巾着でしかない白洲ではなく、この男でも取り上げてみろ。」
 「いやいや、それはまあ、ちょっと、できないでしょう。」
 「ふん、上層部に、権力に、楯突くことができないってわけだ。
 それじゃあ、「マッカーサーを叱った男」ってことで、俺の親父をとりあげろ。親父は毎日のように怒鳴りつけていたぞ。「馬鹿野郎、マッカーサー!」、「こらマッカーサー、右へ行くな!」、なんてね。MPなんかが歩いて来ると、わざと叱るんで、子供心に正直俺は怖かったが、しかし親父はおかまいなしだった。「マッカーサーの野郎、こら、そんな所へションベンするな!」。「文句あるかマッカーサー。あるなら英語で one とでもいってみろ!」、ってね。そしたら、マッカーサーも根性のある奴で、すかさずMPに、「ワン!」と吠えるんだ。」
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 「これで終わりですか。だんだん文体も内容も品が悪くなってきて、その果てに終わりって感じですね(笑)。大体長すぎますよ。中身もないのに悪口だけで。」
 「いやいや。悪口だけじゃないよ。ちゃんと評価もしているよ。まあしかし、これだけのブームだから、[白洲次郎]で検索して当サイトを訪れ、面食らった方も、少数ながらいたかもしれないな。」
 「もしもそういう方がおられたとすれば、申しわけありません。白洲という人のことは、私はよく知りませんし、本格的に批判したわけではありません。」
 「まあな。だから、誰かのフィクション発言にしておいたんだ。フィクションを事実のように思わせるNHKドラマなどとは、そこが違う。」
 「いやまあ、それはどうか分かりませんが、とにかく、一方的に誉める声ばかりなので、同じ材料で正反対の見方もできるよといいたかったわけです。問題にしたかったのは、彼を余りにも過剰評価するメディアの方ですので、ご容赦ください。」
 「確かに次郎のような過去の人物なら、たとえ乗せられてもそれほどの実害はないだろうが、マスコミは、つい先日も、純一郎でそれをやったからなあ。桑原桑原。」(下の追記に続く)