ライト(3)

 さて、そのライトというやつが実にやっかいなものであることは、いまや誰もが知っています。極端な場合には、いや極端ではなくありふれたことですが、いまもライトの名の下に人のライトがどんどん抹殺されてゆき、そこでまた報復ライトが発動されて、というように連鎖が続いています。
 ところで、先に触れた英和辞典(前者)では、ライトの原義は「ある基準にぴったり合っている」ことだとされていましたが、JapanKnowledge 「プログレッシブ英和中辞典」という辞書の形容詞ライトの訳は、「(事実・道理・基準・原理に照らして)正しい、正当な」というところから始まっています。
 要するにライトそのものが正解や基準というのではなく、何かある基準があって、それに「照らして」、そこに「ピッタリ」だということなのでしょう。ズレたり外れたりしてなくてピッタリ当たっている重なっている、そういう事や物やあるいは人が、「正しい」といわれます。いい換えれば、「正しい」というのは判定なんで、逆に「正義」から辞書を引けば、right の前に「justice」が来るわけです。 
 もちろん、広義でいえば「法」あるいは「基準」は何でもいいので、例えば彼女の覚醒剤の使い方は売人から教えられた使用「法」に照らして「正しい」ものであったかどうか、といったケースも含まれます。けれども「正義」と重ねようとすると、そういう例はまずい。となると、justice 判定の基準は、基準あるいは法が「正しい」ことを要求します。とはいえ、もちろん今わざとそうしたのですが、「正しい」法に合ってることが「正しい」ことだ、というのは「正しい」定義になっていません。そこで、正義という意味でのライト判定をしようとすると、当の判定レベルを超えた、メタレベルに「正しい」法が必要になるわけです。当たり前のことをややこしくいっているだけですが。