ライト(11)6月蜂起

 湯「社会システムの革命的な組み替えとかシステムの運用上の改革とかいった、政治や政策の議論は、あなた方におまかせしますよ。私の関心事は、ひとりひとりの生命と生活をどう守ってゆくかということです。」
 辻「いえ、だから最初にいいましたが、具体的に生命と生活を守ってゆくための、いろんな活動については、それはもう大変尊敬しているんです。ただ、何というか、システムから落ちこぼれた人たちのセーフティ・ネットというのは、システムにとってのセーフティ装置としても機能するわけで・・・」
 湯「暴動や犯罪を防いでシステムを守ることじゃないか、といいたいわけですね。」
 辻「いえ、だからダメだというのでは全くないんですよ。ただ、そういう面ももっているということで。何というか、もう少し怒ってもいいと思うんですけどねえ。」
 湯「怒って前進できるときは怒り、お願いして解決できるときはお願いし、協力してもらえるときは協力してもらい・・・でやっていますよ。」
 辻「それはそうなんですけど・・・。私がイラチということですかねえ(笑)。」
 湯「システムと生活者と、双方の意味でのセーフティ・デバイスがうまく働かなければ、ある時点で怒りのマグマが暴発するでしょう。仕事庁のやり方はすごいと思うのですけど、ただ、いまのやり方では、先行き、どうなるんでしょうね。応援しているだけに心配なんですよ。
 辻「そのときはそのときで、大丈夫ですよ。人々のエネルギーと智慧はすごいですからね。乗り越えてゆきますよ。」
 湯「そのすごいエネルギーや智慧をもっている人々の生命や生活を、負けを覚悟した政治的な実験に賭けるようなことだけはやめて下さいよ。犠牲者は必ず弱者の方に大で、さらに、これまでより強力な治安システムを招きます。応援しながら、心配しているのです。」(以下略)
 1848年6月パリ・・・残念ながら、その心配は現実のものとなりました。後に「6月蜂起」と呼ばれることになる事件がそれです。
 閑話休題