沖縄県内でお願いします

 「やはり、自民党様が正しうございました。学べば学ぶほど、自民党様の案より他にはないということを、今さらながら身に沁みて痛感致しております。自民党様の長年のご苦労も知らず、全く不勉強のまま至らぬことを口にして、いらざる混乱を招いてしまいましたことを、国民の皆様、米国の皆様、そして自民党様に、心からお詫び申し上げる次第でございます。と申しましても、あれは決して公約といったものではなく、あの時つい私の口から出ました単なることばだったのでございます。浅かったといわれれば浅く、愚かだったといわれれば愚かでございました。ことここに至りましては、皆様方におかれましても、愚かなことばを信じてしまったこともまた愚かであったと思って頂く他ございません。過ちを正すに憚ることなく、共に愚かさから立ち返ろうではございませんか。では、愚かさから立ち戻るべき賢明な道とは何なのでありましょうか。思えば思うほどに、長年の自民党様の路線通り、引き続き全面的に沖縄の皆様に犠牲になって頂くことが、賢明な道だということが分かって参った次第でございます。わが本土にあってはならない危険を抑止するために、基地ゆえに日々起こる危険を、沖縄の皆様にお引き受け頂く他ないというのが、本土の者の本音なのであります。本日、徳之島の町長様にお目にかかり特にお願い致しました折りに、町長様の方から、おことばがございました。「沖縄の方々のお気持ちは痛いほど分かります。首相としては何卒、沖縄に負担させるか徳之島に負担させるか何処に持って行くかといったことではなく、軍備を、基地を縮小してゆくという方向で、是非アメリカと交渉して頂きたい」、というおことばでした。正直申せば、私もまた、かつてはそのような思いを持たぬではございませんでした。けれども、この半年の間、「移転先を探すのではなく、基地縮小を検討せよ」といった声が澎湃としてわき起こって、基地移転案を圧倒するということはありませんでした。結局私は、アジアの緊張緩和、基地縮小の方向で考えるのではなく、軍事力でアジアの国々を抑え込むべきであり、そのためには世界最強米軍の基地をぜひ維持すべきであって、重い負担を沖縄に押しつけ続けるのもやむをえないという、従来の自民党様の考えに近づくに至ったのでございます。私だけではございません。端的に申しますと「本土が不安だから基地をなくすな、本土が迷惑だから沖縄に置いておけ」、という声は、どうやら本土の多くの皆様の本音ではございませんでしょうか。沖縄の皆様方には、もと琉球は日本ではなかったという歴史を思い起こして頂きまして、耐え難きを耐え忍び難きを忍んで、併合してくれた本土大和の人柱になり続けてやろうというご気概を、改めてお示し下さいますよう、伏してお願い申し上げる次第でございます。もちろん、今ここで申し上げるだけではなく、月半ばには再び島の方にお伺いさせて頂き、直接住民の皆様方に誠心誠意ことばを尽くしてお願い致すつもりにしております。と申しましても、以前私が漏らしました愚かな口約を愚かにも信じられたばかりに、皆様方と致しましても、今さら自発的に、今後も人柱を続けてやろうというご心境ではなくなっているということもまた、理解しております。けれども、時間は限られております。誠に申し訳なくまた肝苦しいことではございますが、何が何でも5月末という期限の方は守らせて頂こうと心に決めておる次第でございます。従いまして、万々一その時点でもなおお聞き入れのない場合には、万やむを得ません。断腸の思いをもって断断固たる態度で望む他ない、という心境に立ち至ったところでございます。自民党様の案が正しいとは申せ、皆様ご案内の通り、実際には自民党様は14年もの間、その案を実現すべく杭一本打てなかったのでございます。私どももまたこの度、基本的に自民党様の案に立ち戻ることになったわけでございますが、私どもは自民党様とはやはり違うのであります。自民党様が杭一本打てなかったあの美ら海に、何としても数百本数千本の杭を打ち込んでみせよう、という決意をしておる所存です。沖縄の皆様方におかれましては、何卒ご覚悟の程を、伏して願い上げる次第でございます。」