残酷の隠蔽

monduhr2006-09-12

 板東直子氏とかいう作家が新聞コラムで、飼い猫が生んだ子猫を崖下に投げ捨てていると書いたのをきっかけに、多少の議論が起こったらしい。
 氏の言い分は、どうやら、子猫殺しを隠さず書くことで、現代文明社会が隠蔽している残酷という現実を、人々の前に改めて突きつけているのだ、ということであるらしい。なるほど。屠殺を隠蔽してステーキを貪り食うのが現代社会であれば、氏の猫殺しは、人々に突きつけられた屠殺の真似事のつもりなのでもあろう。
 しかし、ふりかえれば屠殺だけではもちろんなく、文明社会は、レバーひとつで糞尿を隠蔽し、袋入りの精米で田の草取りを隠蔽し・・・ている。とうの昔に、パンツこそ「隠蔽=文明」の象徴だと喝破して、議員にまでなった人もいるのである。
 そんなわけで、現代文明が「隠蔽」する現実を突きつけるべく時々子猫を殺すという板東氏は、当然また時々、パンツも付けず裸に泥をなすりつけて玄関先で尿を撒き、文明社会の告発を実践しているのでもあろう。
 しゃらくさい話である。結局、残酷だけが目的なのだ。