忘れもの

 前にも書いたが、物忘れの名人である。ずっと前から、自分は余程ひどいという自覚がある。しかし世の中には、子供連れで外出してわが子を置き忘れて帰ったりするような人もザラにいるらしく、そういう人に比べれば、まだ足元にも及ばない。
 が、しかしそうはいっても。結構失敗ばかりして、周囲にも迷惑をかけている。
 メモを持ち歩けばいいじゃないかという人もいるが、そして試したことはもちろんあるが、そのメモを見忘れるから駄目である。パソコンや携帯のアラーム機能を使えばいいじゃないかという人もいるが、こまめにセットしたりするのを忘れるから駄目である。
 ところで、物忘れは紛失に通じる。自分のものをなくした場合は何とかなる。問題なのは、預かったものや借りたものをなくした時である。それでも、貸してくれた人のものをなくした場合には謝りようがある。一番困るのは、借りたものを又貸ししてくれた場合である。本のことだけに限っても・・。
 中学のとき、友だちが先生から借りた本を、君も読めといって貸ししてくれたのだが、その本をなくした。これには困ったが、結局、どうしようもなくて、友だちと一緒に、先生の家まで謝りに行った。
 高校のとき、友だちがお兄さんの本を貸してくれたのだが、その本をなくした。当然友だちはお兄さんから催促され、それでも返さないから叱られているらしく、大変困った。結局どうしたか忘れたが、申し訳ないことをした。
 中学のときの友だちはYといい、高校のときの友だちはSといって、こういうことは、いまでも覚えている。二人ともやさしい性格で、強くいわれはしなかったので、それがよけいこたえた。もう二度とそういうことはしないようにしようと思うのだが、でもまた繰り返す。どうも、こういうのは、もう直らないように思われる。と、開き直ってはいけないのであるが。