なんだかんだ

 アベが叫んでいた。「格差格差といいますが、景気は確実に上向きです」。これはいったい、どういうことをいってるのだろうか。
 「渇水渇水といいますが、ダムの水量は確実に増えています」。これなら分かる。逆向きの相関関係にある後件をあげて前件をうち消すという構造になっている。
 だが、格差が拡大しつつ景気が上昇、あるいはむしろ、格差拡大を足場に景気が上昇。そういったことがありうる(ある)以上、景気が上向きなら格差は軽減解消するという関係にはない。両者は別概念である。アベ発言は、「雨だ雨だといいますが、2かける3は間違いなく6です」、といったいい方に等しい。論理的には。
 しかし、では、アベ発言は無内容文かといえば、もちろんそうではない。
 「なんだかんだ(いう)」という慣用句がある。「なんだかんだいっても、富士山が一番だ」。「なんだかんだ(何だ彼だ)いう」というのは、<つまらぬ難癖をつける>という意味である。「格差拡大、年金、天下り・・・なんだかんだ、国民はいいますが、それらは<つまらぬ難癖>です。大事なことは「景気」です」。まあ、そういうことをいいたいのであろう。
 「世間の人はなんだかんだといいいますが、難癖は無視、儲かれば勝ちなんですから」。
 「野党や世間の人は格差格差といいますが、難癖は無視、景気は上向きなんですから」。