負け犬?はどこにも

 立教大関連のサイト(ここ)で、香山リカ氏と酒井順子氏が短い対談をしています。
 一時的かどうかは分かりませんが、最近女性の結婚率も出生率も、低下傾向が止まったということで、その話題なのですが、香山氏が
 香山 〜 「結婚なんてしなくてもいいもん!」などと、肩ひじ張っていた私たちの世代の方が実は特殊なのかもしれないとも思えてきちゃいますね・・・。
 といったあと、次のようなやりとりになります。
 香山 ところで、酒井さんもお読みになったとおっしゃっていた水木しげるさんの奥様が書いた『ゲゲゲの女房』(武良布枝著、実業之日本社)を先日私も読んだのですが、この奥様がすごい。 〜 彼女には“人に依存しないで生きていく”という発想は最初からなかったそうですね。水木さんとお見合いして一日で結婚を決め、水木さんに「アシスタントをしろ」と言われればして、「引っ込んでいろ」と言われれば引っ込み・・・という感じの人生だったそうです。さすがに時々寂しくもなったりもするのですが、旅行に連れて行ってもらうと安心する、みたいな。
 酒井 でも、かえってそれくらいの感覚でいた方が幸せって寄ってくるような気もしますが・・・。
 香山 え、何ですって!?今の発言は、戦後の女性の歩みを全否定するようなものなんですけどー。
 酒井 そ、そうですか?でも、私たちの親の世代ってみんな水木しげるさんの奥さんみたいだったなぁって思いますよ。他人のお金を使って生きていく宿命みたいなものを何とも思わないで生きていけたという意味で。
 香山氏の驚きが伝わってくるようです。酒井氏はとっさに、親の世代のことのように切り替えていますが、元の発言がこの通りだとすれば、むしろ本音と読めます。
 思えば、「負け犬」というのも、誤解されたというよりも、あるいは半面、もっと素直なことばだったのでしょうか。考えさせられます。
 けれども、翻って考えてみると、「自立、自立」というのは、女性だけでなく、「戦後の歩み」そのものの合い言葉だったわけですが、男たちもまた、本音では「依存の気楽さ」で「幸せが寄ってくる」のを待ちつつ、戦後を暮らしてきたのでした。
 え、何ですって!?戦後の歩みを全否定するようなものなんですけどー。
 そ、そうですか?
 でも、イシハラとかコイズミとかハシモトとか、その他、世の中に多いその類の独断男(女)に、どこか分からなくとも、どこかに「連れて行ってもらうと安心」し、また、国や会社などに何かを「「〜をしろ」と言われればして、「引っ込んでいろ」と言われれば引っ込み」、そうしていれば「幸せって寄ってくるような気」でいるというのは、男も女もなく、世の中そのものの姿ではないでしょうか。
 もしも驚くべきだとするならば、それは、昨今の「女性の歩み」にではなく、あらゆる人々の「戦後の歩み」が、ついにここに至っているというそのことに、改めて驚くべきでしょう。