経済コラム

 新聞で一番見ない株価欄ですが、先日20日朝日)ふと、経済コラムの、「貧困再生産」という見出しが目にとまりました。(<安曇野>というペンネームですが、経済記者が書いているのでしょう。違っていたらすみません。)
 読んでみると、特に問題ないことをいっているように見えますが・・・
 「〜バブルが崩壊して以後、〜日本の経済社会には、様々な悪しき現象が出現した。その代表的なのが、格差社会あるいは「勝ち組」「負け組」といわれる貧富の差の拡大であろう」。ということで、「特に派遣、パートなど」の現状が指摘されます。
 このような「現状」は今や誰もが日々痛感していることですが、私たち素人が、短いながらも専門記者のコラムで知りたいのは、この「悪しき現状」の原因や対応策についてのヒントです。
 コラムはいいます。「これはひとえに、〜国際的な競争で生き残りをかけた企業が賃金コストを引き下げるために、非正規雇用を増やしてそれを固定化した結果である」。「ひとえに」というのですから、「企業」が「悪しき現状」をもたらした元凶だというわけでしょう。
 だがそのことは、「企業」が「国際的な競争で生き残りをかけ」ようとした戦略目標自体がそもそも問題だったということなのでしょうか。それとも、問題は目標にではなく、それを実現する手段として「賃金コスト」削減という方法をとったことにあったのでしょうか。あるいはまた、そのいずれでもなく、「現状」は不可避な事態として耐える以外ないのでしょうか。短いコラムとはいえ、そういった突っ込んだ視点は見あたりません。
 ただ、もうひとつ、いっていることがあります。
 年功序列、終身雇用といった安定的な雇用・賃金制度はもはや過去の話となってしま」い、「いまや「下流社会」といわれる低所得者層が、社会の底辺層に滞留している」、のですが、この「底辺層」のあり方が、昔と違っているというのです。
 「50年代そして60年代の高度成長を支えた一つの大きな要因は、〜低所得層の〜上方志向であった。低学歴、低所得の親ほど〜歯をくいしばって頑張」っていた。ところが、いまでは、そんな「低所得層」が「歯をくいしばって頑張」るような「上方志向」がなくなっている、と指摘されます。
 そういえば、今日の朝日「文芸時評」で、斉藤美奈子さんが、吉本大先生の「新貧困社会」論をからかっています。
 吉本隆明が〜かなりねぼけた論を展開している。〜現代を「第二の敗戦期」と呼び、<戦中派である僕らの世代は、本当の飢えを知っています>とか述べているのもなんだかズレているし(現代の貧困は構造的な格差=階層の固定化であって敗戦期とは背景がちがう)、若年層を指して<本当の問題は貧困と言うより、何か人間の精神的な抵抗力が弱くなってしまったこと>と評すにいたっては、また精神論? である。」
 経済コラムは、必ずしも精神論のつもりではないのかもしれませんが、言い方は似ています。結局、コラムによれば、「ひとえに」イカンのは「企業」なのですが、一方、いまの「低所得者層」も、「歯をくいしばって頑張」る「精神的な抵抗力が弱くなってしまっ」ているのであって、こういう現状は、実に困った問題だ、ということのようです。
 「この社会的な階層間の動きが消滅したことが将来、日本経済の活力をそぎ、社会全体の沈滞をもたらすことは明らかだろう」。経済コラムですから、「低所得者層」にとって困った問題だという言い方ではなく、「日本経済」にとって困った問題だと書くのは、まあ仕方ありません。
 けれども、そのような終わり方は別としても、読み終わって何となくすっきりしないと感じたのは、これまで経済コラムなど読んだこともない、私だけの感想なのでしょうか。
 (いつものくせ無駄に長くなりましたので、明日に続けます。)