煙草と長生きと

 日本の煙草は比較的安いのだそうで、この際税率を上げて、一挙に一箱1000円位にしたらどうか、という動きがあるようです。未成年の喫煙予防などいくつかの理由があるのでしょうが、税収増というのもひとつの狙いになっているようです。
 森永卓郎という人がいます。本職は「経済アナリスト」とのことですが、私たちの目に触れるのは、テレビのコメンテーターとしての顔です。
 ところで、この人は喫煙者だそうですが、先日、たばこ増税によって「本当に税収は増えるのか」、というコラム(朝日)を書いていました。その中に、面白い一節がありましたので紹介します。
 面白い、などといっては叱られそうですね。昨今、喫煙者への風当たりが非常に強く、森永氏ならずとも、何とか反論したい気持ちは分かります。お得意の経済的な視点から、ひとこ言いたかったのでしょう。 
 「禁煙運動を進める人たちは、喫煙によって国民医療費が増えているという指摘を一様にする」。しかし、と、森本氏はそれに反論するのです。
 氏もまた、喫煙者は肺がんなどの発生率が高く、だから平均寿命が短い、という疫学的データは認めます。だからこそ、と森永氏はいいます。
 「寿命の短くなった期間に発生する医療費は、確実に減少しているはずだ。また、寿命が短くなった期間の年金給付も確実に減少している。」
 う〜ん。なるほど。「経済アナリスト」というだけあって、そうきますか。
 これは、裏返せば、長生きすればその分だけ国民経済上の負担が増える、ということですね。ま、もちろんそうではありますがね。先日来の保険制度改悪のニュースでも、「後期高齢者は早く死ねということか」と、誠にもってもっともな怒りを表明されておられる方が大勢いらっしゃいました。大体、何とか長生きしたいと思っているのに、「国民医療費」とか「国家財政」とかの話を持ち出されれば、たまったものではありません。
 でも、いまは、そっちの方には話をもってゆきません。思いついたのは、こんな会話です。
  
 「何とかしなさいよ。そのうち、メタボは外出禁止になるわよ。」
 「何馬鹿なことを。別にいまさら一緒に外出してくれなくたって。」
 「私じゃないわよ。政府のことよ。」
 「全く、政府も困ったもんだ。体型まで管理しようってんだからな。」
 「でも、不健康でしょう、それじゃ。」
 「何いってんだ。日本人の理想の健康体型は、昔から貫禄ある相撲取り型、西郷隆盛型と決まってたんだぞ。筋肉質が持ち上げられるようになったのは軍事教練が始まってからだ。」
 「またそういう屁理屈をいう。それは日本人の男性のことだけでしょう。」
 「そんなことはない。ルネサンスの美女(神)ヌードなんて、みんな腹がボッティチェリだろうが。ウエストくびれなんて、コルセットの纏足からさ。」
 「むちゃくちゃなこといって。昔のことはいいのよ。ともかく、メタボは不健康なの。その上煙草も止めないし。まるで<歩く不健康>じゃないの。」
 「別にいいじゃないか。メタボで誰に迷惑かける訳じゃないし。煙草もちゃんと喫煙場所で吸ってるし。」
 「迷惑かけないってことないでしょう。煙草を吸い続けて肺がんでもなったら大変じゃないの。医療費もかかるし。」
 「おいおい、医療費の問題かい。」
 「政府の話ですよ。何しろ財政難ですからね。禁メタボとか禁煙とかいってるのは、国民医療費抑制のためでもあるんですってよ。」
 「ところが、それが違うんだな。ほら、これを見ろ、この記事だ。」
 「ああ、森永さんて、テレビに出てる人ね。で、何ていってるわけ?」
 「いけない。もうこんな時間だ。また明日。」