政治利用しないという政治利用

 巷間いわれる黒幕幹事長の反論というのも分かったような分からないような、しかしまあ記者の日頃の不勉強ぶりを利用したのは一枚上手でしたが、さらには、実は大勲位が動いたのだという話まで出てきて、いやはや何が何だか状態になっているようです。
 マスコミはこの問題でも、「政治利用しない」という言葉を単に慣用句として振り回すだけなので、黒幕氏に薄っぺらな質問しかできず、反論されるとグウの音もでないのは情けないことです。もうちょっと何とか、自分のアタマで考えて記事でも書けないものですかね。
 黒幕氏は、憲法をバックに、内閣が助言したことに対して宮内庁の役人ばらが何をいうか、といったわけですが、帝国海軍出身の大勲位大勲位で、位階の低い宮内庁の役人ばらが何をいうか、と思っていることでしょう。
 そもそも天皇制というのは、憲法に規定された装置であり、つまり政治装置以外の何物でもありません。黒幕氏がアピールしたように、戦後天皇制はいわゆる機関説なわけす(認められているように、戦前もまた、機関説の弾圧にもかかわらず、実際には機関説で貫かれているのですが、ここではその問題はおきます)。「政治利用しない」というキャッチフレーズは、、機関説的に「天皇制を政治利用する」ための重要なカードに他なりません。例えば、今はあの共産党も、天皇制を少なくとも当面は支持していますが、そのような政治的立場は、「政治利用しない」というフレーズを政治利用して、維持されているわけです。もちろん、「政治利用しない」というフレーズには、大いに政治的な利用価値がありますから、それを「守る」という政治的立場を強調することは、非常に重要です。だからといって、「政治利用しない」というフレーズが政治的フレーズであり、天皇制が政治装置であることには変わりありません。
 などと、マジな書き方はやめますが、「政治利用しない」というフレーズが政治フレーズだという程度のことも分からないまま、「政治利用しない」というフレーズを政治利用して、簡単に黒幕氏に反論されて終わりというのは、情けないことです。もしも、「政治利用しない」ということを、本腰を入れて主張しようというのなら、大勲位の登場といういい機会ですから、手始めに例えば、そもそも特定政党の長老政治家を大勲位にすべしという当時の内閣の助言と承認は、まさに天皇の政治利用だったのではないか、という記事でも書くことから始めてみればどうでしょうか。そういえば、はるかに長期に亘って政党党首を務めあげた政治家もいたわけですしね。