迷走手詰まりというシナリオ

 四面楚歌でも不思議に「腹案あり」とか「ご心配なく」とかいって来た首相でしたが、迷走を重ねた末にいよいよ手詰まり、自ら設定した期限を目前にして、もはや追い詰められたかのように見えます。
 ところが、池田香代子さんは、このブログで、このような「液状化」を招いたことこそ「鳩山由起夫の歴史的功績」だといっておられます。確かに、「沖縄をはじめとする各地でこれほど米軍基地受け入れ拒否の声が高まっているのは〜鳩山さんを押し立てた新政権が生まれた結果です」。「政権交代によって、ホンネにのしかかっていた重石がとりのぞかれたのです。今や基地候補として名前が挙がった地域は、次々と基地反対へと液状化し、基地建設の杭一本打てない状態です」。「これを、このくにの民主主義にとっての政治家鳩山由起夫の功績としないでどうします?」
 ほんとにそうですね。だからこそ、問題は、この次です。
 池田さんもいわれているように、国民の声を解放したハト氏の、次の一手は、オバマ氏にいうことです。「これまで努力を重ねましたが、普天間存続も沖縄各地や県外各地への移転も、全て住民の合意が得られないことが明らかになりました。あなたのいわれるように、住民の合意なき基地はありえません。日本住民の総意に基づき、強くお願いいたします。基地縮小か本国移転か、いずれかしかありません。真の日米協調のために、ご検討ください」。
 ここからは、脱線です。
 かなり前のいつか、ホットライン会談を盗聴しました。けしからぬ会話のようです。
 オバマ「ご承知のように、世界的な米軍基地展開は、東側の軍事的封じ込めという冷戦戦略に基づくものであり、冷戦時代の終わりと共に、その政治的意味を急速に失いつつあります。さらに米国の経済及び財政の危機的状況により、無用な基地維持は大きな負担になっております。アジアにおいても、米中対立から米中協調時代への移行に伴い、従来のように中ソ仮想敵を封じ込めるために太平洋に不沈基地を維持し続けなければならないという理由はありません。また付言すれば、軍事技術の発達によって、長大な基地維持なしでも、有事即応を含む安全保障軍事システムに瑕瑾が生じることはありません。それら全ての点に鑑み、沖縄基地縮小こそがわがアメリカの基本戦略であるということを、先ずしっかりご理解頂きたい。」
 鳩山「いや、もちろん分かっておりますとも。だから私は、日米お互いのためにこそ、国外移転、つまり沖縄基地を縮小してほしい、移転先が必要ならアメリカ国内に引き取ってほしい、といってきたのです。それがベストだと。」
 オ「でも、それ、日本国政府として正式要請していませんよね。むしろ最初から、国外移転がベストだがダメならせめて国内移転、などといってたでしょう。基地周辺や移転候補先の<住民>は基地反対で強くまとまっていますが、日本<国民>はどうなんですか。日本国民を代表して、国民は基地反対なので、移転ではなく縮小してほしいと、あなたはわが国に要請するのですか。当方は、むしろそうしてもらえばはっきり動けるのですが、首相として、それはできるんですか。」
 鳩「いや、そこなんですよ。基地が縮小されると中国や北朝鮮が攻めて来るなんて馬鹿げたことを本気で思ってる連中もいますしね。でもそれより、基地縮小なんてアメリカが承知する筈がない、日米安保協調体制を壊すのかという、そういう論調が多いんです。与党の中にさえ少なくありません。」
 オ「そんな馬鹿な。基地の一部縮小程度で、日米同盟関係が壊れると思ってるなら、政治音痴も甚だしいですね。」
 鳩「だからひとつ大統領から、そうおっしゃって頂ければありがたいのですがね。基地の一部縮小くらいで日米関係は壊れない、むしろ住民の反対をおしのけて基地を維持し反米感情を育てることこそ日米関係を損なうことであって、基地縮小が日本国民の総意なら、当然同盟国国民の意思を尊重して、単純縮小かグアムやテニアンなど国内への移転を検討する、と。」
 オ「だから、先ずそちらから要請してください。日本国民の付託を受けた日本国政府として、沖縄基地を移転ではなく縮小してほしいと、そういう要請をしてください。」
 鳩「う〜ん。だからその、私が基地縮小か国外移転を正式要求しようとすると、多分大変なことになります。アメリカに楯突いてどうするのか、中国の脅威にどう対抗するのかってね。」
 オ「そこをきちんとまとめるのが、あなたの責任でしょう。あなたの方から正式要請もないのに、私の方から基地を縮小します、引き取りますとはいえませんよ。」
 鳩「何故ですか。」
 オ「何故ってねえ、あなた(^o^)。素人みたいなこといわないでください。外交というのは駆け引きです。」
 鳩「以前、普天間基地はグアムに移転するという案をそちらから提示されたことがあるそうですが、ひっこめたようですね。あれも駆け引きだったのですか。」
 オ「そのことは聞いていません。ノーコメントです。」
 鳩「駆け引きは苦手なんです。友愛の精神で、率直にやってもらえないでしょうか。とにかくこちらでは、自分の町には基地は反対だが、でもアメリカに護ってもらわないと不安だ、アメリカを怒らせると怖い、という声が多いんですよ。結局それは、沖縄に犠牲になれという、けしからん声なのですがね。駆け引きかどうか知りませんが原案が最良と突っ張るのをやめて、アメリカの方から、自発的に縮小してもらえませんかね。」
 オ「一旦両国の合意が出来たのですから、こちらから変更はできません。政権交替があったそちらから、見直し基地縮小を要請するのがスジでしょう。」
 鳩「じゃ、せめて、仮に日本から縮小要請があっても日米同盟は全く揺るがないと発言して、安心させてくださいよ。」
 オ「全く、しょうがないですね。ここだけの話ですが、そちらにも、移転工事の受注を狙う手合いを筆頭に基地で儲けようという連中がいますでしょう。こちらにも、日本からできるだけカネを引き出したいという連中が軍にも政府にもいるんです。仮にですが、そちらから、移転費用や移転先の整備費などを全額負担するから、何とか本国へ引き取ってもらえないか、という要請があれば、連中を説得することも可能でしょう。だが、そのためにも、こちらから自発的な撤退縮小はしませんし、縮小しても問題ないという態度はとりません。そんなことをすると、かえって私の弱腰を突かれて、存続派を説得できなくなります。とにかく、カネを負担するから引き取ってほしいとそちらから要請してください。」
 鳩「カネはともかく、何度もいいますが、一旦合意したんだからと強気のアメリカに楯突くのは怖い、それに中国も怖い、という声が多いのです。そちらから安心させてくれないと、動けないんです。」
 オ「しょうがないですねえ(^o^)。じゃ、奥の手を教えましょう。こちらは原案で突っ張りますので、そちらは困った困ったと国内移転先を探してください。」
 鳩「でも、多分反対ばかりですよ。」
 オ「だから、それでいいんです。住民の反対を力で押さえ込んではいけません。」
 鳩「でも、それじゃ困るでしょう。いつまでも移転先が決まりません。」
 オ「期限を設定するのです。例えば5月末とかですね。それまでに決めると繰り返しいってください。」
 鳩「そんなことしたら、私はどうなるのですか。また住民反対また住民反対と、移転先が決められない。迷走首相といわれて支持率がどんどん下がります。」
 オ「安心してください。5月末までです。」
 鳩「そんなことないでしょう。決まらないまま期限が来れば、全くの手詰まりになってしまいます。迷走の末に手詰まり、どうするんですか。」
 オ「迷走迷走で遂に手詰まり。それが狙いです。もうどうしようもない。国内の候補地はどこも住民が絶対反対。もう後がない。」
 鳩「あ、分かりました。それを見かねて、同盟国アメリカが助けてくれる。基地をグアムに移転しましょう、と提案してくれるわけですね。」
 オ「全く甘いですね、あなたは(^o^)。そんなことはしません。」
 鳩「そしたら、どうなるんですか。内閣退陣せよというんですか。」
 オ「まあね。自民党の方がアメリカにとっては組みしやすかったですから、それがホントの狙いです。といいたいのですが、私はそこまではしません(^o^)。もう自民党はダメですからね。」
 鳩「じゃ、どうすればいいのですか。」
 オ「国内候補地が全くなくなり、完全手詰まり。そうなると、あとは、アメリカにお願いする他なくなるでしょう。グアム移転でも何でもカネを出しますので日本国内については移転ではなく縮小してください、と。」
 鳩「国内移転にも整備や補償や振興に巨額のカネがかかりますから、カネを出すことは、多分世論も納得するでしょう。でも、基地必要論、縮小反対論から叩かれます。」
 オ「だから、あなたが、どこもかしこも住民に反対されて、迷走につぐ迷走をしてみせることが大事なんです。それで手詰まりになったなら、内閣を自民党に戻しても他の党に替えても、もうどうしようもないことが、誰の目にも明らかになります。あなたの迷走のおかげで、沖縄は全島が基地反対という状況になってしまったら、辺野古にも戻れないし普天間存続もできない。他の土地にも持ってゆけない。どんな党も、どんな評論家も、もう何もいえませんよ。」
 鳩「で、私が、基地縮小を要求すると・・・」
 オ「私は、引き換えにカネを要求します。それで、そのカネで、こちらの存続派を説得します。なに、大丈夫ですよ。こちらの戦略的な本音は縮小ですから。カネでOKです。」
 鳩「私はどうなりますか。」
 オ「それはもう基地問題を解決したことで、ぐ〜んと支持率UPですよ。もちろん、私から、これで日米同盟はさらに新しい時代を迎えた。中国を敵視する日米安保同盟ではなく、日米中の同盟協調関係によって、新しいアジアの平和な未来が開かれたとか何とか、ま、適当にそんな演説をして、あなたとホワイトハウスで握手している写真を世界中に発信しますよ。参院選に、これ以上のパックアップはないでしょう。」
 鳩「そんなにうまくゆきますかね。」
 オ「そのためには、5月末まで、日米は敵対している必要があります。両方とも、率先妥協したと思われると反対派に足をすくわれますからね。われわれも親しく会談などしないことです。あくまで私は原案で突っ張る。あなたは国内移転で努力努力、迷走迷走。追いつめられてください(^o^)。それで、もはや誰にも、これしかないというところで、5月末にアメリカに要請。6月に日米合意。7月参院選。」 
 鳩「そんなにうまくゆきますかね。」