ベルクソン13 子供部屋にて

 「ミニカー買って」「もういっぱいあるじゃないの」「いっぱいないよ、ちょっとだよ」「じゃ数えてごらん」「え〜っと、1台2台・・」「箱の中かきまわしながらじゃだめよ。数えるためには、床に出して拡げなくちゃ」「出したよ」「バラバラに拡げたら、ちゃんと数えられないでしょ。きれいに並べないと」「並べたよ」「え〜、丸に並べたの」「きれいでしょ」「まあねえ。じゃ、数えてごらん」「1台2台・・・12、13、あれ、これもう数えたかな〜。分からなくなっちゃった」「ね。数えるためには、列を作らないとダメなの」「どうして」「数え始めと数え終わりが分からなくなるからよ」「始めと終わり?お話しみたいだね」「そうよ、始まりがあって、途中があって、おしまいになるの。お話しと同じ」「わかった。列に並べたよ」「何台あった?」「まだ並べただけで数えていないよ」「あ、そうだね。並べることと数えることは違うよね。じゃ、数えてごらん」「1,2,3・・・14、え〜っと15・・・18、19。19台だった」「すごいねえ」「ボク疲れちゃった。数えるのって時間かかるんだね」
 「お母さん、ほら、電線に雀がいるよ。あ、飛んでっちゃった」「お母さんも見たかったなあ」「でも、私覚えてるから教えてあげるよ。あのねえ、一列になって並んでたよ」「ふ〜ん。何羽いたの?」「え〜っとねえ、ちょっと待って、今数えるから。1,2,3,4,5。5羽いたよ」「列をイメージすることと、それを数えることとは、別のことなんだね。普通は並べながら数えるけど」「何のこと?」「いえ、何かを数えるには、列に並べる場所と数える時間と、両方が要るってこと・・・なんだ、当たり前のことだね」「お母さん、ヘンだよ」「ごめんごめん、おやつ食べよ」(続く)