戦争は国民の命を守らない

 戦争を始めるのは簡単だが終わらせるのは極めて難しい、と言ったのは誰だったか知らないが、ウクライナの戦争はまだ終わらない。世の中、圧倒的に、煽ったりけしかけたりする声ばかりである。
 殺し殺されて何を求め、何を守るのか。例えば、戦争は国民の命を守らない。

 沖縄からセブ島に逃れた人からの聞き書き

 「私は山で兄に会って、海軍の方へいったから命があったんです。うちの義姉の弟嫁は、十一の男の子を頭に女の子四人連れて、陸軍の方にのこった。それを、子供がいると、ガヤガヤして敵に聞かれると言って、五人とも銃剣で殺してしまったんです。男の子は、『兵隊さん、泣きもしないし、なんでも言うこと聞きますから、殺さないで下さい』と言って逃げさまよっているのに、つかまえて。四、五歳まで私か同じ家にいて育てた子です。そして妹たち四人も……。敵に知られると言って、鉄砲をうたないんです。銃剣で……。」(澤地久枝『滄海よ眠れ』より)